そろばんを習う小学生が増えているという。1986年には全国に1万3010軒あったそろばん教室は、2021年には4512軒にまで減っているのに、2024年の習い事ランキングでは6位だ(学研教育総合研究所「小学生白書」)。東京都内の珠算教室は「この1年間に500人ぐらい生徒さんが増えた」と話している。
中学受験の算数計算力アップに有効
そろばんブームが起きているのか。どうやら中学受験の対策らしい。子どもをそろばん教室に通わせている親の半数は、中学受験を考えているという。
といっても、そろばんが試験科目になったわけではない。入試の点数配分で算数と国語の高い学校が多く、なかには算数だけという中学校もある。算数の成績が合否を決めるというわけで、その算数の計算力アップに、そろばんは有効なのだ。
人口10万人あたりのそろばん教室数が最も多い富山県で、あるそろばん教室に通う小学生は「計算で高得点をとれるのがうれしい」と話している。
海外で高まる人気、トンガでは必須科目
しかし、中学受験が終わったら、ほとんどの子どもはタブレット端末になって、そろばんはやめてしまうだろうし、いまどき街の商店だってそろばんは使わない。「播州そろばん」で知られ、生産日本一の兵庫県では、1960(昭和35)年には年間360万丁が作られていたが、今では15万丁にまで減った。
では、そろばんはまもなく消えてしまうのか。 日本とは逆に、海外ではそろばんへの関心が高まっている。国際珠算普及基金によると、インド、中国、オーストラリア、アメリカ、イギリスなど100以上の国・地域でそろばんの指導が行われていて、南太平洋のトンガの公立小学校ではそろばんは必修科目だ。10進法の学習にそろばんはもってこいらしい。
日本では小学校の3年生と4年生でそろばんの授業があるけれど、2~3時間程度。しかし、そろばんは論理的な思考を処理する左脳ではなく、感覚的な思考を処理する右脳を使う。計算能力だけでなく情緒も豊かになるという。なるほど、認知症予防にも効果があるのではないかな。
(シニアエディター 関口一喜)