テレビは「ミスタープロ野球」長嶋茂雄・読売ジャイアンツ終身名誉監督一色だが、2025年6月8日放送の「サンデーモーニング」(TBS系)の「スポーツご意見番 喝!あっぱれ!」コーナーも、張本勲さんがスペシャルご意見番に登場、長嶋エピソード満載だった。張本さんもいくつもの感動秘話を披露した。
「生まれて初めてですよ、私にバントのサインを出したの」
サブキャスターの駒田健吾アナが「張本さんは長嶋監督に正座させられたと......」と話を向けると、「そうなんですよ」と思い出を話し始めた。
「地方のゲームで、ランナー1、3塁、ワンアウトでした。バッターとしてはおいしい場面なんですよ。外野フライ、ボテボテでも1点入るんだから」という時に、長嶋監督からスクイズのサインが出る。
「おれにスクイズ? 生まれて初めてですよ、私にバントのサインを出したの」
と、きのうのことのように話す。なにしろ、バッティングのうまさはピカイチの張本さんである。自分でもそれが自慢だったから、張本さんはバントのサインを無視。フルスイングしてセンター前ヒットに。その1点もあって、巨人は勝利した。
「この人に最後までついて行こうと思った」
「試合後にマネージャーが『監督が呼んでる』と。よしよし小遣いくれるんだなと(喜びました)。打点挙げてるからね。そしたら、(部屋に入ったとたん)『座れっ!』て。私はパ・リーグでは肩で風切ってた男ですよ。私に座れ、なんて言う人はいませんよ。でも、(長嶋さんは)自分も正座しとるんです。私も正座しましたよ。そしたら、真正面(から私)を見て、『お前、あの時はな、オレは1点欲しかったんだよ。お前にバントさせれば100%成功する。ランナー2塁で、次の王(貞治)と勝負したいんだ。お前が監督になった時、これはよくわかる』って言われて、涙が出ました。両手、頭を(床に)ついて謝りました。そして、この人に最後までついていこうと思いましたね」と、うっすら涙を浮かべながら語った。
長嶋さん、王さん、張本さん――。みな不世出のスーパースターだが、それぞれに魅力と違いがある。長嶋茂雄は自分がスーパースターであることを承知して、野球ファンのためにそれを演じ続けようとした。王貞治はスーパースターと思いあがってはいけない、常に謙虚であろうとしている人で、張本勲はスーパースターと言われるとうれしいけれど、照れ屋だから「いやあ、俺は違うよ」なんてわざと言ったりする。みんな素敵だなあ。
(シニアエディター 関口一喜)