神戸市内のラーメン店で加熱不十分な鶏チャーシューを含んだ商品を食べて食中毒が発生するなどしたことから、安全な調理のやり方について関心が高まっている。食べ物が傷みやすい梅雨入りもあって、肉を低温調理するコツを解説した内閣府食品安全委員会サイトのページが注目を集めている。詳細な店の状況は不明だが、どんな調理ならよかったのか、神戸市の食品衛生課に話を聞いた。「おいしさを追求するあまり、どうしても加熱不足になりがち」この店のラーメンを食べて、高熱や下痢などの症状が出たとのX投稿が相次ぎ、2025年6月上旬には、原因不明のまま、「低温調理」「カンピロバクター」がトレンド入りして関心を集めた。この店は、食べログで24年に「百名店」にも選ばれる人気店だった。ただ、明らかに生焼けとみられる鶏チャーシューの写真が拡散されて、波紋が広がった。この騒ぎで、通報が寄せられた神戸市保健所が立ち入り調査に入り、提供された食事が食中毒の原因になったとして、店を営業停止にした。患者らは、快方に向かっているという。その後、全国で蒸し暑い天気も続いたためか、各地で飲食店などでの食中毒発生が報じられ、いくつかの都道府県が、食中毒注意報を出した。こうした中で、6月17日ごろに、内閣府食品安全委員会の公式サイトが公開しているお知らせ「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」がネットで注目され、はてなブックマークが多く付いた。お知らせは、21年12月から掲載されており、「近頃流行している『低温調理』レシピは、おいしさを追求するあまり、どうしても加熱不足になりがちです」として、低温調理のコツをアドバイスしている。具体的には、(1)中心温度計を使うこと、(2)肉の見た目で判断しないこと、(3)表面を焼いた肉をアルミホイルで包んだりジッパー付き袋に入れたりしてお湯に浸けるやり方はしないこと、の3つを挙げた。低温調理には時間がかかると強調し、中心部が同じ温度になるまで待つため、63度なら約100分かかる、70~75度なら約70分かかる、と注意を促している。「店側は、安全だとする認識が間違っていた」それでは、神戸市内のラーメン店は、トレンド入りしたように、こうしたコツに基づかない「低温調理」が行われていたのだろうか。この点について、同市の食品衛生課では6月17日、J-CASTニュースの取材に対し、「企業情報に関わりますので、回答は控えさせて下さい」としたうえで、一般論として、次のような可能性を挙げた。「食中毒が発生する原因としては、加熱不足の低温調理や表面を焼いただけなど、お店のやり方が間違っていることもあると思います。牛肉のレアと見た目が一緒のため、火が通っていると勘違いすることもあるでしょう。鶏肉は、見た目が生だと危険だという認識がないお店もあるため、食中毒が起きています。鶏刺し、鶏たたきなどが安全だと、間違った認識があることもあります」もっとも、鶏肉は見た目が焼けていても、中心温度を63度などにして加熱していない場合もあり、調理工程の安全性が大事になるとも指摘した。今回のラーメン店については、患者の便を複数採取した結果、カンピロバクターが検出され、それに基づく食中毒だと断定したと明らかにした。鶏チャーシューから検出されていないため断定はしていないものの、その製造工程や見た目の写真から原因食材だと推定していることも明かした。「実物を見たり検査したりしていないので断定はしていませんが、改めて確認して、鶏チャーシューが加熱不足だと推定されました。店としては、適切に調理していると認識していたようですが、安全だとする認識が間違っていたということです。プロだからといって、自分だけでは判断せず、専門家に聞いてやってほしいと思っています」(J-CASTニュース編集部 野口博之)
記事に戻る