プロボクシングのWBO世界ウエルター級タイトル戦が、2025年6月19日に東京・大田区総合体育館で行われ、王者ブライアン・ノーマン(米国、24)が、同級2位・佐々木尽(八王子中屋、23)を5回KOで下した。
井上「ノーマンとウエルター級の壁にショックを受けた夜」
佐々木は日本人選手初のウエルター級世界王者を目指したが、王者の強打に散った。
日本人選手がウエルター級の世界王座に挑戦したのは、09年10月以来、約16年ぶりで、佐々木が5人目だった。
過去、日本勢は最軽量のミニマム級(47.6キロ)からミドル級(72.5キロ)までの13階級で世界王者を輩出しているが、いまだウエルター級(66.6キロ)の世界王者は誕生していない。
なぜ日本人選手はウエルター級で世界王座を獲得できないのか。J-CASTニュースでは、多くの世界王者を育てたTMKジムの金平桂一郎会長(59)に話を聞いた。
スポーツ紙の報道によると、スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、32)が、現地でノーマン対佐々木戦を観戦。試合後、報道陣の取材に応じ、「ノーマンとウエルター級の壁にショックを受けた夜でした」などと感想を漏らしたという。
世界の「モンスター」でさえもショックを受けたウエルター級王者のボクシング。この階級でいまだ日本人選手の世界王者が誕生しない理由について、金平会長は「決して軽量級を卑下するわけではない」と前置きし、次のように持論を展開した。
「この辺りの階級は、シンプルに競技人口が多い」
「この辺りの階級は、シンプルに競技人口が多い。競技人口ががぜん増えるので、ライト級あたりから全体的にレベルが高くなる。ひとえに競技人口の多さ。その中で切磋琢磨しているから、レベルも必然的に上がってきます。アマチュアにしても競技人口が多いので、その中で勝ち上がっていくのが難しい。そういう状況の中で、プロになり、プロの世界で勝ち上がってくるからレベルが高い」
そして、ノーマン対佐々木戦を振り返りながら、ウエルター級王者のレベルの高さに言及した。
「今回のノーマン選手もそうだが、ウエルター級には、パンチのスピード、パワー、滑らかさを備えた選手が多く、切り替えのスムーズさが段違い。ミドル級で、竹原(慎二)さんや、村田(諒太)さんが王座を取ったように、いずれはウエルター級でも王座を取る選手が現れると思います。ただ、ものすごく高い壁であることは間違いでしょう」
日本においてウエルター級は、中量級から重量級の間の階級とされ、軽量級に比べると競技人口は少ない。重量級が豊富なロシアでボクシングを学んだ経験を持つ金平会長は、日本と海外の練習環境の違いを指摘し、こう分析した。
「日本と海外の練習環境には違いがあります。練習相手ひとつにしても、日本には世界的な高いレベルにいる選手がなかなかいない。日本ボクシング界悲願のヘビー級王者にしても、いずれ誕生すると信じていますが、現状、すべての練習環境を含めて、環境を整えるのは難しい。ファイトマネーにしても、ウエルター級あたりになると桁が違ってくる。そのファイトマネーを求め、必然的に激戦区となる」
現在、スーパーバンタム級(55.3キロ)は、井上が主要4団体の王座を統一。1つ下のバンタム級(53.5キロ)は、休養王者を含め、4人の日本人選手がそれぞれ世界王者として君臨し、軽量級は充実している。
果たしてこの先、ウエルター級に日本人世界王者が誕生するのか。若きファイター、佐々木の今後に注目が集まる。