三菱UFJ銀行は2025年6月23日、元行員が顧客に架空の金融商品を提案、約4000万円をだまし取っていたと発表した。発覚したのは24年8月としており、同銀行の行員が貸金庫に預けられた資産を盗んだ事案の発表時には、すでに把握していたことになる。なぜ、今回の事案は発覚から約10か月もかかったのか。三菱UFJ銀行に聞いた。発覚時点で詐取した元行員は定年退職していた今回の事案は、三菱UFJ銀行の発表によると、新潟支店に勤務していた60代の元行員男性が、07年6月から16年9月までに1人の顧客に架空の金融商品を提案し、複数回にわたり現金を詐取した。その後、20年7月に新潟支店名で偽造した預り証書を交付し、正規の金融商品だと偽った。詐取した総額は3984万6769円。被害者には三菱UFJ銀行が元行員に代わって補償済みとした。事案は24年8月に発覚し、その時点で元行員は定年退職していたという。三菱UFJ銀行は24年11月28日に刑事告訴し、元行員は発表と同日の25年6月23日に、有印私文書偽造・同行使罪で起訴されたとも明らかにしている。約7か月前にも、三菱UFJ銀行は、行員による大規模な不祥事を発表している。24年11月22日の発表で、行員が貸金庫に預けられた顧客の資産を窃取した事案が10月31日に発覚した、という内容だ。被害総額は、行員の供述に基づくものとしたうえで、「時価十数億円程度」という。なお、事案の発覚を受け、発表時までに該当の行員を懲戒解雇したとしている。その後、該当の行員は窃盗の容疑で逮捕されたと25年1月14日に発表した。今回の新潟支店の詐取の事案の発覚は24年8月としているため、貸金庫の事案の発表時点で、三菱UFJ銀行はすでに新潟支店の詐取の事案も把握していることになる。また、貸金庫の事案は発覚から約3週間、該当行員の逮捕前に発表しているのに対し、今回の新潟支店の詐取の事案は発表までに約10か月もかかっている。なぜ、貸金庫の事案の発表時などに今回の新潟支店の詐取の事案を公表しなかったのだろうか。発表タイミングは「捜査当局と相談しながら進めてきた」三菱UFJ銀行広報部の担当者は24日、J-CASTニュースの取材に対し、今回の新潟支店の詐取の事案の発表タイミングについて、「捜査を妨げる懸念がありましたため、捜査当局と相談しながら進めてきた経緯があります」と説明した。担当者の説明によると、新潟支店の詐取の事案は発覚時に元行員がすでに定年退職していたため、「銀行側から直接の事実確認が難しい」状態だった。そのため、「警察による捜査にご協力する中で補償などについても対応を行った」とした。早期の発表は警察の捜査を妨げる懸念があったとし、捜査当局と相談、被害者の意向も確認のうえ、元行員が起訴されたタイミングでの公表になったとした。一方で、貸金庫の事案については、発覚時点で該当の行員が在籍しており、社内での確認ができる状態だった。さらに、被害者がほかにいる可能性があり「お客様に被害の状況を確認いただく必要」があったため、早期に公表。翌日から貸金庫を契約している顧客に来店してもらい、被害に遭っていないかの確認を進めたとした。なお、どちらの事案も発覚後に警察に相談し、「銀行側として告発も行っております」とした。
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