政治の世界では安倍一強の時代が長かった。安倍政権は、2012年12月衆院選、13年7月参院選、14年12月衆院選、16年7月参院選、17年10月衆院選、19年7月参院選と国政選挙6連勝を成し遂げた。その間、岩盤保守層とともに、ふわっと支持している若年層の支持も固めていた。その結果、自公の議席占有率は、衆院で12年67%、14年68%、17年が67%とほぼ同じ。参院選結果を踏まえた議席占有率も13年が55%、16年が60%、19年57%と極めて安定していた。岩盤保守層には、しっかりとした国家観に基づく安全保障、ふわっと支持の若年層にはアベノミクスによる雇用機会の確保で応えた。自民党の岩盤保守層、ふわっと支持の若年層の行方は...ところが、安倍晋三元首相が3年前、22年7月に暗殺されると、自民党の岩盤保守層とふわっと支持の若年層が離れ出した。まずこれらをつかんだのは、国民民主党だった。手取りを増やすという、分かりやすいコンセプトで、若年層をつかんだ。現実的な安全保障政策で、一定の保守層も取り込んだ。国民民主党の支持率は鰻上りになり、24年10月衆院選では大躍進した。しかし、今回の参院選に臨み、山尾志桜里氏の公認内定問題でぶち壊して、国民民主党の支持率は伸び悩み、低下に転じた。その間隙に出てきたのが、20年結党し、22年7月参院選で国政政党になった参政党だ。先の都議選でも大躍進だった。そこで、筆者も最近、参政党・神谷宗弊代表の発言に気をつけるようにしていた。しかし、党首討論会で、「多国籍企業がパンデミックを引き起こした」、「在日米軍は日本から出ていくべき」、「中国を入れたアジア版NATO」という発言を聞いて、驚いた。パンデミックの件は陰謀論的だし、安全保障論ははっきりいって、リアルな立場からみればお花畑で幼稚園レベルだ。日本国総理の威厳を著しくおとしめ、日本の国益を害している鳩山氏もっとも、今の国政政党である左派政党からも似たような安全保障論を聞くこともあるので、別に驚かない。政権でなく、現実問題をやらない野党は、お花畑論でリアルな対応を求められる与党を批判だけすればいいからだ。思い返すと、政権交代を成し遂げた民主党政権の鳩山由紀夫元首相は、抑止力を知らず、辺野古移転で「最低でも県外」と発言したこともある。その後、鳩山氏は総理経験者にも関わらず、いいように中国に利用され、古巣からも見放され、日本国総理の威厳を著しくおとしめ、日本の国益を害している。その鳩山氏が率いた民主党でも風が吹けば政権交代できたのだから、参政党が参院選で票を集めることは不思議でない。++ 高橋洋一プロフィール高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。
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