ここ数年のストーブリーグで注目されるのが、日本人選手のメジャーリーグへの移籍だ。2025年は3年前のセ・リーグ三冠王、東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆選手の移籍に注目が集まっている。しかし、今年はケガに悩まされ、1軍でわずか1試合の出場に止まっている。その動向は、どうなっているのだろうか。メジャーリーグでもトップクラスの打球速度今シーズンは脇腹痛による長期離脱から、2025年4月17日の阪神タイガース戦で復帰したものの、その試合で再び同じ箇所を痛めて二軍調整となっていた。村上は熊本県の九州学院高等学校からドラフト1位でヤクルトに入団して、今年8年目。4年目の2021年にホームラン王を獲得すると、翌2022年には打率.318、本塁打56(1964年の王貞治の55本を更新)、打点134でセ・リーグ三冠王を獲得した。その年オフから計18億円の3年契約を結ぶ。その後2年は不調の時期もありながら、30本以上のホームランを記録、昨年はホームラン王を獲得している。今年のオフで3年契約が切れることもあり、村上は今年末にポスティングでのメジャー挑戦を希望していた。米国でも「一発の打球速度が非常に高く、WBCでのホームラン(115.1mph=約185.4km/h)は、メジャーリーグでもトップクラスに匹敵」(MLB.com)と紹介するなど、熱い注目を集めていた。ヤクルトの林田哲哉球団社長も6月25日に「行きたいと言ったならば、申請してあげようと思う」と村上の希望を尊重することを表明している。現時点で、村上のメジャー移籍には壁がなくなったと考えられる。スピードボールへの対応力に疑問符現地・米国で村上は、先に挙げたようなホームランバッターとしての評価は高い。メディアではレッドソックス、ヤンキース、ドジャースなど、すでに獲得候補も上がってきている。しかし、懸念点も多数挙げられている。ひとつは三振数の多さだ。レッドソックス専門サイト「TalkSox」は「バットコントロールに課題があり、ゾーン内の対応率が低い」と、村上の三振率やMLBの高速球への対応力に疑問を呈している。また、もうひとつの懸念点は内野手であることだ。これまでも松井稼頭央、西岡剛、中島裕之、中村紀洋といった日本人内野手がメジャーへ移籍したものの、短期間で帰国している。村上は日本で主にサードを守っているが、守備力はあまり高くない。スラッガーとはいえ、メジャーの内野手は強肩・俊足など身体能力の高い選手が多い。かつてメジャーでも外野守備で魅せた田口壮氏は、正面でボールを捕るという日本流の守備が仇となることを指摘する。メジャーでは体勢よりアウトを優先する意識があり、「体の使い方がまったく違いますから」と語っている。メジャー挑戦は1年遅らせたほうが......?「TalkSox」では村上がメジャーに移籍した場合「ファーストにコンバートされることになるだろう」と語っているが、ファーストは名だたるスラッガーがひしめきあうポジションでもある。となれば、より打撃力に重点が置かれることになるが、このケガのブランクはどう響くのだろうか。米メディアでは、このケガの影響を心配する声が多く、「SportsIllustrated」をはじめ、「実戦不足」を理由に、移籍を1年遅らせる可能性を報じている。7月8日、東北楽天ゴールデンイーグルスとの2軍戦で、村上宗隆は3か月ぶりの実戦復帰を果たした。4回までの出場で2打数0安打、1つのエラーを記録したものの、「2打席目はしっかりスイングできたのでホッとしてます」と話した。まずは確実にケガを治してもらって、1日も早く1軍で豪快なバッティングを見たいものだ。
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