「セミの幼虫を採取しないでください」。東京都内のある都立公園が、園内の約30か所にこんな張り紙を出し、守るよう呼びかけている。
大量採取して食用にしているらしいと来園者から指摘され、4、5年前からセミが鳴くシーズンに掲示しているという。その状況について、公園の管理事務所に話を聞いた。
主に中国人が園内で大量に採取している?
セミを採ると言ったら、日本なら、子どもたちが虫取り網で追いかけるシーンばかり思い浮かべるだろう。
しかし、張り紙では、採取禁止について「子供達がセミを楽しみにしています」と理由を挙げた。つまり、子ども以外の何者かが採取しているということだ。
この貼り紙を園内に掲示したのは、江東区内にある「猿江恩賜公園」だ。広場や池、野球場などがあり、都民らが憩う場になっている。
公園を管理する猿江恩賜公園サービスセンターがJ-CASTニュースの取材に答えたところによると、4、5年ほど前に、外国人、主に中国人が園内でセミの幼虫を大量に採取していると来園者から指摘があり、張り紙の掲示を始めた。
「昨年7、8月には、夜間の巡回中に、中国の方とみられる数人がセミの幼虫を数十匹も採っていたのを直接確認しました。注意しますと、『なぜ採ったらダメなのか』と逆に聞かれました」
都立公園条例の第16条では、「鳥獣魚貝の類を捕獲しまたは殺傷すること」「物品販売、業としての写真撮影その他営業行為をすること」などを禁じている。子どもたちが虫取り網でセミ採りする程度はいいが、セミの幼虫を大量に採ることは、条例に抵触するという。
2025年は、セミのシーズンに備え、6月末から前もって、張り紙を園内の約30か所に掲示した。日本語のほか、多国籍の来園者に呼びかけるときの公共ルールに準じて、中国語、韓国語、英語で注意喚起している。
「幼虫を揚げるなどして食べていると聞いた」
「ミンミンゼミが鳴き始めたばかりで、まだ幼虫の大量採取の話は聞いていません。これからは、アブラゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシが鳴き始めます。大量摂取との因果関係は分かりませんが、セミが見られないと、子どもたちもガッカリしますし、今月末には、セミの羽化観察会も予定しています」
園内で幼虫を採る目的については、こんな見方を示した。
「うわさレベルではありますが、幼虫を揚げるなどして食べていると聞いたことがあります。味が美味しいかどうかは、分かりません。食べるために採取することは、遠慮してほしいと思っています」
セミの幼虫を巡っては、18年8月に埼玉県川口市内の公園で、「食用を目的としたセミの幼虫等の捕獲はやめてください」などと書かれた張り紙が英語や中国語でも掲示されたと報じられたことがある。20年8月も東京都杉並区内の公園で、「食用その他の目的でセミ等を大量捕獲するのはおやめください」と日本語で張り紙が出されたとの報道があった。
中国や東南アジアなどでは、セミを食用にする文化が一部であるというが、どんな人が何の目的で採取しているのかは、はっきりしないままだ。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)