2025年7月16日に行われた大リーグ・オールスター戦に、ナショナルリーグの1番・指名打者で出場した大谷翔平選手(ドジャース)は、2年連続ホームランは出なかったが、先制点につながるヒットで勝利に貢献した。出産・育児休業の取得率は高くなったがその大谷選手、生まれてまだ2か月半の長女について、「家に帰って、(子どもの)顔を見るだけでうれしいですし、それだけで1日の疲れとかもなくなりますし、それが一番幸せだなと思います」と目を細め、「基本的には午前中にお風呂に入れるとか。あとは帰宅した後は僕が面倒みる感じ」と明かした。大リーグのスーパースターも子育て優先というわけだが、では、わが国の男性の育児の現状はどうか。2023年のデータでは、出産・育児休業取得率は30.1%で、20年の12.65%から大幅に上がっているのだが、スウェーデン90%、ノルウェー80%は別格としても、ドイツの40%より低い。国連児童基金(ユニセフ)はOECD・EU41か国の育休や保育政策を、「育児休業」「保育への参加率」「保育の質」「保育費の手頃さ」の4項目で評価し、総合でルクセンブルク、アイスランド、スウェーデンが上位、日本は22位と中位で、とくに遅れているというわけではなかった。なかでも、育児休業の項目で日本は1位だったと、内閣府男女共同参画局は自画自賛している。「保育への参加率」が低いでは、日本は男性の育児環境が整った国なのか。決してそんなことはない。育児休業の項目で日本が1位となったのは、法律で育児給付金を受給できる父親の休業期間を30週と各国中で最長に定めているからだ。しかし、実際は2週間未満の取得が大半で、ユニセフのランキングでも、他の項目の「保育への参加率」は31位、「保育の質」は22位、「保育費の手ごろさ」は26位と決して高くない。制度はあるが、利用できるような働き方や社会的コンセンサスが整っておらず、「育休の取得率や保育従事者の社会的立場の低さに課題を残している」と指摘された。また、育休中も家事や育児をせず、家でゴロゴロする、外出ばかりしている「取るだけ育休」の父親も少なくない。スウェーデンやノルウェーは育休を父親に割り当てて、育児に当たらせる「パパ・クォータ」を導入(その期間は母親は出勤)、育児の父母不平等の解消も進めている。育休が取りにくいのは上司の圧力?日本政府は2025年に男性の育休取得率を50%とする目標を掲げ、4月から育児休業給付金(育休手当)を一定の条件を満たせば「手取り相当額の10割」にする改正を行ったが、これも制度つくって魂入れずになっていないか。給付金額より、とにかく育休を取りやすくすることが先決だ。では、なぜ取りにくいのか。3大理由は、「会社・上司が取らせてくれない」「評価や昇進に影響が出そう」「周囲に取得した人がいない」というものだという。まず、ここらあたりの意識改革から始めなくてはなるまい。大谷選手を起用して、「子育てお母さん、お父さん。あなたこそスーパースターです」というキャンペーンを厚生労働省あたりが展開してはどうか。(シニアエディター関口一喜)
記事に戻る