企業は「人材確保」が最重要テーマといえるくらいになりつつあります。
人材確保とは採用と離職防止の両方を指します。企業にとっては、以前であれば採用一辺倒でもよかったのですが、誰もが簡単に離職できるくらいに転職市場が成熟してきました。
しかし現在は、採用と離職防止はセットで考えないと人材確保はできない時代です。
企業の認識もできつつあります。採用後の受け入れ態勢(オンボーディング)やキャリア支援などの働く環境整備の必要性が、経営者の言葉としても語られるようになってきています。
転職活動をする人にとってみれば、会社がオンボーディングを手厚く準備してくれる時代になったといえます。ただ、会社任せだけに頼らず、自らがオンボーディングに取り組む意識は重要です。
溶け込む時期はケアが充実も...現実とのギャップに気づきにくい
具体的には、積極的なコミュニケーション、謙虚な姿勢、そして仕事への真摯な取り組みが重要でしょう。明るく挨拶をすること、周囲の人々の名前を覚え、積極的に話しかけること、そして仕事で成果を出すことを意識しましょう。
・同僚の名前を覚え、積極的に話しかける。
・相手の話をよく聞き、共感する姿勢を見せる。
・ランチタイムや休憩時間も積極的にコミュニケーションを図る。
こうした取り組みに加えて、
・新しい環境やルールに柔軟に対応する。
・前職と比較するような発言は避ける。
・周囲のアドバイスを素直に受け入れる。
など意識していきたいものです。
転職間もないころには、会社も職場にも溶けこんでもらおうと意識してケアをしてくれます。ところが、一定の期間を超えると何事も溶け込んでいて当たり前といった状況に変わっていきます。
こうした、慣れるまでのケアをしてもらえる時期は「ハネムーン期間」と呼ばれ、3か月から半年程度とされています。
この期間は、自分自身も周囲も新しい環境への期待感や高揚感から、多少の困難や不満があっても前向きに捉えやすい時期です。よって、現実とのギャップに気づきにくくなります。
ハネムーン期間が過ぎるころのチェックポイントと対策
したがって、ハネムーン期間が過ぎようとするタイミングは注意が必要です。
仕事の進め方や人間関係で疑問や不安を感じたら、早めに上司や先輩に相談することが大切。仕事への慣れや焦り、疲労感を感じやすくなるのもこの時期です。
それは、ハネムーン・ハングオーバー効果とも呼ばれます。当初の期待とギャップを感じる状況のことを意味します。
にもかかわらず、職場ではルールや情報のインプット方法などを覚えて、慣れていることを前提に接してくるようになりがちです。そのため、「明らかに無理」と感じる職場であれば、早めの転職をおすすめします。
ただ、なんとか頑張ろうと思うのであれば、ここは重要な踏ん張りどころです。
1つの対策として、社内に自分の理解者をつくってください。愚痴をこぼせる相手、共感してくれる相手がひとりいるだけで、心理的なストレスはグンと軽減されるものです。
職場環境を鑑みながら、同じ部署がいいのか? 別の部署で探すべきか? そのあたりは自分に対して、理解と応援をしてくれる人であれば、どちらでもいいと思います。
社内に確固たる人間関係を構築している人と一緒に行動を起こすことで、問題がスムーズに解決することはよくあります。
キャリアアドバイザーに相談してみるという手も
どんなに社会人としての経験豊富な人でも、転職直後の新しい会社では右も左もわからない赤ん坊のような状態。
周りの人を頼ることは決して、恥ずかしいことではありません。悩みや困っていることは正直に打ち明けながら、少しずつ自分が働きやすい環境を整えていってください。
もし、周囲に理解者が見当たらない場合、会社を辞めるかどうかは確定していないけど、転職活動をして、キャリアアドバイザーに相談してみることもありです。
外部にいるという立場で、転職する人の悩みを理解してもらえる存在ですから、転職先探しに限らず、的確なアドバイスをもらえる可能性が高いと思います。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ)/株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。