参政、国民民主が躍進し自民・公明の連立与党が過半数割れ 参院選で進んだ多党化はどこへ向かうのか

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   2025年7月20日投票の参議院選では、自民・公明の連立与党が衆参両院で過半数割れした一方で、参政党など新たな政党が躍進し「多党化の流れ」が一気に進んだ。

   自民党内からは石破茂首相の「続投」に疑問の声が膨らんでいるが、世の関心はそれより、「多党化」時代に有効な政策を迅速に打ち出す体制をどう実現するかに移っているように見える。平成の政治改革は、30年前に「小選挙区比例代表制」を導入し「政権交代可能な2大政党」を目指したが、時代は大きな転換点を迎えた。

  • 石破茂首相(2023年1月撮影)
    石破茂首相(2023年1月撮影)
  • 国民民主党・玉木雄一郎代表(2025年7月3日撮影)
    国民民主党・玉木雄一郎代表(2025年7月3日撮影)
  • 参政党・神谷宗幣代表(2025年7月20日撮影)
    参政党・神谷宗幣代表(2025年7月20日撮影)
  • 石破茂首相(2023年1月撮影)
  • 国民民主党・玉木雄一郎代表(2025年7月3日撮影)
  • 参政党・神谷宗幣代表(2025年7月20日撮影)

新たに3政党が誕生、「比例票」に見えた「新興」「老舗」政党の浮き沈み

   今回の「比例票」に、「多党化」する政党の浮き沈みが見える。過去最低だった自民党(約1280万票)に続いて、国民民主党(約762万票)、参政党(742.5万票)、立憲民主党(739.7万票)の3党は同じ7議席を獲得したが、立憲が「野党第3党」に沈んだ。新たな政党では、参政党は参院選直前に現職参院議員が入党「議員5人」の政党要件をクリア。この選挙で2議席を獲得した保守党と得票率2%を超えた「チームみらい」が政党要件を満たし、新たに3政党が誕生した。

   一方で、与党の公明党は3年前から100万票近く減らし、1998年の再結党以来最低の8議席に。創立から103年を迎えた共産党(286万票)は、結成1年9か月の保守党(298万票)に逆転された。社民党は、121万票でかろうじて「政党」(1議席)を維持した。

   ただ、政党の数ばかりが増える中で、「連立政権」に向けて準備する動きや政権ビジョン創りの動きは見えてこない。

政党幹部の駆け引きで連立が決まる不透明さに批判

   日本が「二大政党制」のお手本にした「小選挙区制」の英国でも、90年代前後に労働党と保守党の二大政党制が「分解」して、多党化が進行中だ。「二大政党の得票率が落ちて、ともに単独で政権がとれない状況が出現しました。民意が多様化した影響です」と、名古屋大学の近藤康史教授は言う(朝日新聞、24年11月23日)。24年の総選挙で「移民反対」を掲げる「改革党」が躍進したり、日本維新の会のような地域政党「スコットランド国民党」もある。近藤教授は、二大政党に戻る可能性もなお指摘する。「選挙制度がすべてではなく、政策立案能力のある野党を育てるにはどうするか、に取り組むべきだ」。

   欧州では、比例代表制をとる国が多かったため、複数政党による連立政権の歴史が長い。津田塾大学の網谷龍介教授は、「多党制」の経験が長い欧州では、政権発足前に政党間で結ばれる「契約」が政権運営の混乱を防いできた、と言う(朝日新聞24年11月3日)。しかし、欧州では、日本と同じように1980年代ころから、無党派層が増えた。これとともに、政党幹部の駆け引きで連立が決まるような、意思決定の不透明さに批判が強くなった。そこで「契約」による「説明責任」の意識が政党側にも強くなってきたという。

「手取り」「ファースト」で人気の政党に次の具体政策が見えない

   日本はどうか。「手取り」と「日本人ファースト」で、一気に議席を増やした国民民主党と参政党に、次の段階に向けた動きはまだ見えない。選挙中から、政権交代ビジョンを示すこともなかった立憲民主党も、多党化時代への準備は、まだこれからのようだ。

   自民党と社会党の「55年体制」が30年前に終わり、いまの自公と旧民主党、維新などとの政策的な距離は、確実に縮まっているとされる。トランプ米大統領の高関税政策など「反グローバリズム」や「ポピュリズム」に対抗する、共通認識をどう構築するか。税制や社会保障などの長期課題を議論する「与野党連絡会議」などの具体的な提案(牧原出・東大教授)も出始めている。

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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