日本航空(JAL)とANAホールディングス(HD)の航空大手2社が相次いで発表した26年3月期第1四半期(25年4~6月期)決算は、ともに売上高が過去最高を更新した(JALは経営破綻後)。JALは前年同期比11.1%増の4710億円、ANAHDは6.2%増の5487億円だった。好調な業績は国際線がけん引しており、両社そろって国内線の窮状に言及。物価高でコストがかさんでいる上、コロナ禍で単価の高いビジネス客が減り、レジャー客向けの薄利多売を余儀なくされていることが主な原因だ。「低価格セールでレジャー需要を喚起し、高い搭乗率を維持」決算によると、JALは国内線旅客の売上高が1342億円で前年同期比7.6%増。旅客数は13.3%増え、利用率も9.7ポイント改善した。ANAの国内線旅客は売上高が1619億円で、6.8%増えている。旅客数は4.7%増え、利用率も2.8ポイント伸びた。7月30日に記者会見したJALの斎藤祐二副社長によると、それでも国内線は「収支ライン『トントン』というような状況」で、「補助もだいぶ減ってきており、その部分も加味してギリギリ黒字ラインに乗るか乗らないか、というところで、実質的にはなかなか利益は確保できていない」と説明した。7月29日に会見したANAHDの中堀公博グループ最高財務責任者(CFO)も、「新幹線との競争や人口減少により、国内航空市場は恒常的に供給過多の状態にあり、路線別の利益率は低下している」「ビジネス需要が回復しない中、低価格セールでレジャー需要を喚起し、高い搭乗率を維持しているのが実情」などと訴えた。25年度については「政府からのご支援も減ってくるということになれば、赤字になるだろうと想定している」。と説明。第1四半期は増収だったものの、「費用も人件費や外部委託費中心に増加をしており、整備費もまだ高止まりしている。国内線が非常に収支として厳しい状況には変わりない」とした。インバウンド需要にも期待「新幹線で行かない、行けない地方路線は、やはりいっぱいある」5月末には、国内線の持続可能性を探ろうと、国交省が「国内航空のあり方に関する有識者会議」を立ち上げたばかりだ。有識者会議への期待を問われたJAL斎藤氏は「業界全体として各社の収益が上がっていくようなスキーム、対応をどう作るかというところがポイント」だと指摘。ネットワークの効率化や空港使用料の減免、航空機燃料税の軽減などの必要性に言及した。「路便(路線・便)ネットワークのあり方であったり、公租公課についても国際と国内を比べた場合、国内の方が負担が大きいというところもあるので、そういうところの見直しとも含めて、国内線についての持続性を高めていくようなものを、これからご検討いただけるとありがたい」ANA中堀氏も「国内線の事業環境は業界全体の課題であり、官民一体となって取り組んでいく」と話した。JAL斎藤氏は、インバウンド(訪日外国人)のうち、JAL国内線を利用しているのは4%に過ぎないことに言及。新幹線の利用率が高いことは「これはある意味、日本の魅力のひとつで、致し方ないところはある」とする一方で、「新幹線で行かない、行けない地方路線は、やはりいっぱいある」とも指摘。需要が大都市に集中する中で、地方の需要喚起が必要だとした。(J-CASTニュース編集委員兼副編集長工藤博司)
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