注目点は国内にも存在する「タンドラ人気」
気になるのは、豊田会長が「米メーカーのクルマを日本のトヨタの販売店で扱ってもよい」と、石破茂首相に伝えたという大手メディアの報道だ。
かつて日米貿易摩擦が激しかった1990年代半ば、トヨタはGMの「シボレー・キャバリエ」を米国から輸入し、日本のトヨタディーラーで販売したことがあった。しかし、ユーザーの支持を得られず、2000年に販売を打ち切った経緯がある。 当時、キャバリエは右ハンドルとするなど、日本向けに細部の仕様を改めた。しかし、結果として、当初の販売目標を達成できなかった。日本から見て、キャバリエは魅力に乏しかった。
今回も日米合意に基づき、トヨタが日本のディーラーでアメ車を販売する可能性はある。米トランプ大統領に対して、日本が市場を開放した何よりの証拠となるからだ。
しかし、日本でヒットしそうなアメ車など、簡単には思い浮かばない。テスラは日本でも都市部を中心に人気だが、既にテスラは日本で独自の販売網を築いており、トヨタが敢えてディーラーで扱う意味はないだろう。
トヨタが米国から輸入するとすれば、やはり米国メーカーではなく、タンドラのようなトヨタの米国専用車ではないか。少数派とはいえ、今でも日本国内でタンドラなどを愛する一定のファンが存在するからだ。今回の日米合意は、日本のクルマ好きにとって、決して無縁ではない。
(ジャーナリスト 岩城諒)