クマ被害は過去最悪へ...猟友会頼みも進む高齢化とハンター減少 駆除の空白地帯を埋める対策にもハードル

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   全国でクマによる被害が過去最多を記録している。

   環境省によると、2023年度には過去最悪となる219件の人的被害が報告された。2025年度の速報値では、4月から7月末までの人的被害は23年度とほぼ同水準の55人にのぼり、そのうち3人が死亡するなど、最悪のペースとなっている。

  • クマの生息域は里山から市街地周辺へと拡大している
    クマの生息域は里山から市街地周辺へと拡大している
  • 多くの自治体では依然として猟友会に依存した対応が主流(写真と本文は関係ありません)
    多くの自治体では依然として猟友会に依存した対応が主流(写真と本文は関係ありません)
  • クマの生息域は里山から市街地周辺へと拡大している
  • 多くの自治体では依然として猟友会に依存した対応が主流(写真と本文は関係ありません)

公的制度としての「ガバメントハンター」

   これまでクマは「山奥の動物」という認識が一般的だったが、農林水産省の資料によると、2000年代以降、温暖化や過疎化による里山の放棄が進み、クマの生息域は里山から市街地周辺へと拡大している。

   特に秋田・岩手・長野などでは住宅地周辺での目撃例が急増しており、都市近郊でもクマの出没が増加している。

   こうしたクマの駆除は、長らく猟友会の有志によって担われてきた。

   しかし、担い手の高齢化が進み、全国のハンター数はピーク時の4分の1以下にまで減少している。一般社団法人 大日本猟友会のウェブサイトによれば、会員の約6割が60歳以上だという。

   その結果、駆除の空白地帯が各地で生まれつつあり、住民の安全確保が難しくなる深刻な状況となっている。

   こうしたなか、注目されているのが「ガバメントハンター制度」である。これは、野生鳥獣の調査・捕獲・住民対応・啓発活動などを専門に担う職員を地方自治体が直接雇用し、制度的に対応体制を構築する取り組みである。

   先行事例としては、長野県小諸市が挙げられる。平成23(2011)年度に野生動物対策を専門に担う「鳥獣専門員(ガバメントハンター)」を任命し、平成25年4月からは地方上級公務員として正規雇用されている。

   さらに、北海道でも占冠村をはじめとする4市町村でガバメントハンターが設置され、クマなどの大型獣対策に取り組んでいる。

人材育成には相当な時間を要する

   とはいえ、ガバメントハンター制度は全国的にはまだ限定的な施策にとどまっている。

   たとえば山形県では、住民から制度導入の要望があったものの、2024年7月の県広聴では「他県における活用状況等を調査しながら研究していきたいと考えているところ」という回答にとどまっている。

   現在、多くの自治体では依然として猟友会に依存した対応が主流だ。県職員が現地に赴いたとしても、実務対応は難しく、現場との連携不足や判断の遅れがしばしば問題となっている。

   制度の全国展開には複数の課題がある。その一つが、高い人材要件である。クマ対策に用いられるライフル銃の免許は、散弾銃の所持歴が10年以上なければ取得できない。

   さらに、野生動物の生態に関する知識、地域住民とのコミュニケーション能力、法制度への理解など、幅広いスキルが求められ、人材育成には相当な時間を要する。

   加えて、その育成にも財政支援が不可欠であり、自治体単独での対応には限界がある。

   こうした課題をどう乗り越えるかが、制度を広く展開させる鍵となるだろう。

クマ駆除の法整備も、人材難対策にはならず

   クマの出没が増加する傾向にあるなか、2024年9月には「改正鳥獣保護管理法」が施行される。

   これまでは、市街地でクマが出没しても発砲には制限があり、警察官の発砲許可がなければ対応できなかった。

   改正後は、市町村の判断により、市街地での猟銃使用が特例として可能となる。

   とはいえ、市街地での発砲には高い狙撃技術を有する人材が必要であり、依然として人材不足という根本的課題は解消されない。

   クマ被害がこれほど深刻化している現状において、場当たり的な法改正だけでは不十分であり、人材育成のための段階的かつ多層的な制度設計が求められる。

   そのための社会的インフラの一つとして、ガバメントハンター制度は、今まさに本格的な検討をすべきタイミングではないだろうか。

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