社会の理解を得るために、情報公開を
責任能力のない者に刑罰を科さないという原則は、近代刑法の基本であり、日本の入院・通院処遇制度はヨーロッパ諸国に近い仕組みだといえる。
しかしヨーロッパでは、その後の再犯率や社会復帰の実態について透明性のあるデータ公開がなされており、司法判断への理解を促す一助となっている。
一方、日本では処遇件数や在院期間などの統計こそ公表されているものの、退院後の長期的な再犯率については十分に公開されていない。これが、「本当に再犯は防げているのか」という市民の不信感を招いているのではないか。
もちろん、情報公開には人権保護の観点や、医療観察法の施行から日が浅くデータが少ないという課題もある。
とはいえ、社会防衛と治療を両立する制度がすでに存在している以上、こうした課題も含めて、社会全体で十分な議論を行うことが、制度の理解と信頼につながるのではないだろうか。