自民党総裁選は2025年9月22日告示で、5候補が出そろった。届け順は、小林鷹之・元経済安保担当相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗・元総務相、小泉進次郎農水相。投開票日は10月4日とし、12日間のいわゆる「フルスペック型」で実施。自民党国会議員の295票に党員・党友の295票を合わせた590票を争う形で行われる。12日間と短いのは、小泉氏が失言しないような配慮とも言われている。2週間の論戦に耐えられないトップというのも情けないが、国会議論や首脳会談は出来るのか。
世論調査では高市氏&小泉氏が接戦模様
マスコミ各紙の調査では、高市氏と小泉氏は接戦模様だ。21日の日テレ調査は、党員、党友と答えた方を対象にした独自の電話調査である。これは党員名簿に基づくものと一部では噂されている。もしそうなら、適切なサンプルをとれば、かなり精度が高くなる。有効回答は1010人なので、年齢階層を自民党党員の母集団とあわせるには若干足りない気がするが、それを紹介しよう。自民党総裁は誰かという問いで、小泉氏32%、高市氏28%、林氏15%、小林氏7%、茂木氏5%、決めていない14%。他のマスコミの自民党支持層に限定した調査でも、小泉氏が優勢のところが多い。
これは既視感がある。24年の総裁選のときも、出だしは小泉氏だった。ところが、討論などで失言が続くと、小泉氏が失速し、その代わりに石破氏が浮上し、高市氏と石破氏の決選投票になり、石破氏は小泉氏のサポートで総裁になった。
今回は、その轍を踏まないように、選挙期間が短く、討論会回数も少なくなるだろう。その結果、失言が出る確率は少なくなる。このまま、小泉氏が逃げ切るか、失言が出て林氏が浮上するか。
負けた選挙の公約を持ち出す小泉氏
小泉氏の代わりに林氏が出来ても代わり映えしない。最後の決選投票では、小泉・林連合で高市氏は総裁になれない。実は小泉氏も林氏も、ともに岸田政権と石破政権を継承する。林氏は岸田政権と石破政権の官房長官なので継承は当然だ。小泉氏は30年度までに平均賃金を100万円増やすといったが、これは、25年7月の自民党参院選公約でもある。負けた選挙の公約を再び持ち出すのは驚きだ。そもそも石破継承で、解党的出直しというところに大きな矛盾がある。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。