JICA「アフリカ・ホームタウン」撤回、4市に変化は? 1か月で計3万件超問い合わせ、業務への支障「計り知れない」

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   独立行政法人国際協力機構(JICA)は2025年9月25日、国際交流事業「JICAアフリカ・ホームタウン」構想を撤回することを発表した。

   この構想をめぐる誤情報が海外政府や海外メディアにより発信、SNSを通じて拡散されたことで、「アフリカ・ホームタウン」に認定された愛媛県今治市、千葉県木更津市、新潟県三条市、山形県長井市の4市には多くの問い合わせや苦情が相次ぎ、業務に支障が出るような状況があった。4市のこの1か月間の問い合わせや苦情の合計は約3万6000件にも上る。

   撤回の発表から一夜明け26日、三条市への問い合わせの件数は減ったといい、市の担当者は「ほっとして大丈夫なんだなというのがようやくわかってきました」と安堵の心境を明かした。

  • 4市を認定したJICAアフリカ・ホームタウンサミットの様子。今治市のリリースより
    4市を認定したJICAアフリカ・ホームタウンサミットの様子。今治市のリリースより
  • JICAの声明。公式サイトより
    JICAの声明。公式サイトより
  • 4市の共同のコメント。三条市のサイトより
    4市の共同のコメント。三条市のサイトより
  • 4市を認定したJICAアフリカ・ホームタウンサミットの様子。今治市のリリースより
  • JICAの声明。公式サイトより
  • 4市の共同のコメント。三条市のサイトより

「主催者であるJICAが一貫して説明責任を負い、対応」

   JICAは、「『ホームタウン』という名称に加え、JICAが自治体を『ホームタウン』として『認定する』という本構想のあり方そのものが、国内での誤解と混乱を招き、4つの自治体に過大な負担が生じる結果となってしまったと考えています」として、関係自治体へ謝罪。「このような現状を重く受け止め、関係者の皆様方との協議も踏まえ、今般、『アフリカ・ホームタウン』構想を撤回することとしました」と発表した。

   「今後も国際交流を促進する取組を支援していく考え」としたうえで、「これまで移民を促進するための取組は行ってきておらず、今後も行う考えはない」と表明した。

   同日、4市は共同で次のようなコメントを発表した。

「この度の発表に先立ち、JICAから『JICAアフリカ・ホームタウン構想』を撤回するとの報告を受けたところです。上記の報告の中で、主催者であるJICAからは、『当該事業に関しては、主催者であるJICAが一貫して説明責任を負い、対応していく』旨の説明があったところです。今後とも、各市におきましては、市政の一層の発展に努めてまいりますので、引き続きご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます」

   撤回を受け、4市にはどのような反響が寄せられているのか。また、この1か月間、問い合わせや苦情はどの程度寄せられていたのだろうか。4市を取材した。

木更津市、撤回後も「十数件の問い合わせ」が

   木更津市オーガニックシティ推進課の担当者は26日、J-CASTニュースの取材に、これまでの問い合わせや苦情について、電話が8月25日から9月24日までで約9000件、メールが8月23日から4000件以上届いたと明かした。

   前出の担当者は、誤情報だと説明をしてもなかなか信じてもらえないこともあり、「一時間以上電話対応をせざるを得ないようなこともありました」と振り返る。

   また、「今週に入ってやっと1日にお問い合わせをいただく件数が2桁に落ち着いた」状況という。それまでは1日の問い合わせ件数は100件を超えており、「課の職員誰かしらが必ず電話を受けているような状況が1ヶ月の間続いていた」とした。

   撤回を受けての反響については、「今日も十数件の問い合わせをいただいている状況」と明かす。内容としては、「撤回は本当に事実なのか」といった確認や「撤回をしても新たな形でまた何かやるんだろう」といった疑心暗鬼の声が主だったという。

   今回の構想の撤回を受けて、職員はどう感じているのだろうか。前出の担当者は、「昨日の撤回を受けてすぐに安堵ということはない。これで本当に収束するのかどうか、もう少し様子を見てみないと」と話した。

   今後の国際交流の予定については、「一つ一つの情報の出し方で、今回のように大きな波紋を呼んだり誤解を呼んだりしますので、そこはやっぱ慎重にならざるを得ない」として、しばらく様子を見たいとした。

三条市、「『また電話が増えるのかな』とちょっとビクビク」

   三条市地域経営課の担当者は、この1か月間の問い合わせや苦情について、電話が8月25日開庁時から9月25日16時までで約1650件、メールが8月23日から9月25日までで約7380件届いたと明かした。

   問い合わせ件数が1日20から30件に減った時期もあったが、9月10日に市長会見で、ガーナ政府団による視察の予定が中止になったことが発表されると、再び問い合わせの件数が増えたという。

   撤回が発表されて以降の26日は、メールや電話が数件届いている状況という。「完全白紙撤回をしてください」という趣旨のものが多いとした。

   前出の担当者はこの1か月間、対応に当たる職員について「怒鳴られることもあったので、かなり精神的な負担にはなっていたと思います」と振り返る。

   構想の撤回を受けて、「開庁してしばらくするまでは、『また電話が増えるのかな』とちょっとビクビクしていた部分もありましたが、現在それほど電話は来ていないので、ほっとして大丈夫なんだなというのがようやくわかってきました」と安堵の声を上げた。

   今後の国際交流については、具体的に決まっているものはないものの、友好都市との交流は引き続きしていきたい考え。なお、三条市では、24年8月に三条市・JICA・慶応義塾大学SFC研究所の三者間で連携協定を締結し、地域おこし協力隊と海外協力隊に関する取り組みを行ってきたが、構想の撤回に伴い、この協定も終了すると発表している。この協定により日本人学生を地域おこし協力隊として受け入れているが、この受け入れは、「継続していく予定」としている。

長井市と今治市、苦情殺到で業務への支障「計り知れない」

   長井市の総合政策課都市交流推進室の担当者は、この1か月間で届いた問い合わせや苦情の件数は、メールと電話合わせて約8000件以上だとした。8月25日の週がもっとも多かったものの、その後少し落ち着いたものの、9月の第1週目頃に再び問い合わせが来るようになったとした。こうした問い合わせや苦情は、市民よりも市外の人からのものが「圧倒的に多い」という印象だという。

   撤回が発表されて以降の26日は「本当に白紙撤回したのか」「交流事業そのものをやめなさい」といったメールや電話が数件あったという。一方で、「今回のようなことがあって、交流をやめるというのはやっぱり良くないと思います。ぜひ頑張って交流を続けていただきたい」といった声も寄せられたと明かす。

   今後について、以前から続けていたスポーツを通じた交流は続けていきつつも、「不安に思ってらっしゃる方もいらっしゃるので、丁寧に説明しながらしていきたい」とした。

   今治市観光課の担当者は、8月25日から9月24日までの問い合わせや苦情の件数について、電話とメール合わせて約6000件だと明かした。

   最初は1日450件程度届いていた状況が、直近は1日50件程度に減っていたものの、1人あたりにかかる時間は長くなっていったと、前出の担当者は明かした。最初は情報の真偽を尋ねる内容が多かったが、その後は自身の考えを述べるような内容が多かったという。「最低でも15分」は対応に時間がとられたとし、通常業務への影響は「計り知れないものがありました」と話した。

   一方で、26日の問い合わせや苦情は「ほぼほぼないです」とした。

   今後の国際交流の予定については、「アフリカ・ホームタウン」の枠組みの中で交流を予定していたモザンビークについては白紙の状態だが、これまでも行ってきた姉妹都市との交流については「今までと同じように国際交流を継続していきます」とした。

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