「北九州市でムスリム(イスラム教徒)に配慮した学校給食が導入されることが決まった」
このような誤った情報が2025年9月下旬、SNSで拡散された。北九州市はすぐに「事実ではない」と否定したものの、市教育委員会には数日で1000件を超える抗議が寄せられた。
なぜ、こうした誤解が一気に広がったのか。その背景をたどると、学校給食の制度や一部の取り組みに対する理解不足が浮かび上がってくる。
陳情はあったが市は不採用、それなのに
誤解のきっかけは2023年、市民から北九州市に寄せられた陳情だった。
それは、ムスリムにとって禁忌とされる豚由来の食材や酒類の調味料を使わない給食、いわゆるハラール食(神から許可された食べもの)を提供してほしい、という内容だった。
しかし市議会は2025年2月に不採択とし、ハラール給食は導入されなかった。
同じ月、北九州市では「にこにこ給食」と呼ばれる取り組みを実施した。これは、食物アレルギーを持つ児童も安心して食べられるように、豚肉をはじめ28種類の食材を除いた特別メニューである。
ところがこの取り組みが知られると、SNSなどで「日本人が我慢させられている」「国が乗っ取られる」といった意見が拡散し、さらなる誤解を招いてしまった。