ヒグマは被害が出ないと駆除できない 無条件の「間引き」ダメ...スタートした「緊急対策」実効性どこまで

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   北海道では、依然としてヒグマによる被害が相次いでいる。

   2025年9月26日には札幌市西区の平和丘陵公園で、40代の男性がヒグマに襲われる事件が発生し、道内では「ヒグマ警報」が発令された。小樽市でも10月4日、ハンター2人がヒグマにけがを負わされた。

   現在の管理体制では、被害が発生してからでなければ対策に動けない。これでは人の命も暮らしも、そしてヒグマそのものも守れない。

   そもそも、人的被害が出る前にクマの出没を抑える方策はないのだろうか。

  • 北海道ではヒグマ被害が広がっている
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  • 世界遺産・白川郷でもクマ被害
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絶滅の危機からの転換点

   日本では、ヒグマを含む多くの大型野生動物が「鳥獣保護管理法」によって保護されている。

   この法律のもとでは、被害防止を目的とした捕獲にも許可や制限が必要であり、人命や財産に明確な危険が認められない限り、行政が無条件に捕獲を許可することはできない。結果として、「被害が出てからしか動けない」構造となっている。

   さらに、ヒグマ対策には過去の政策転換も影響している。

   北海道では、かつて家畜や人への被害を受け、1966年に「春グマ駆除制度」が導入された。冬眠明けで行動が鈍い春先にヒグマを捕獲する制度で、これにより平野部からヒグマはほぼ駆逐された。

   しかし、その結果として個体数が大幅に減少し、絶滅の危機が懸念されるようになった。

   その後、1990年に制度は廃止され、自然保護への意識の高まりとともにヒグマの個体数は回復した。

   こうして保護政策は成功したものの、近年では再びヒグマの被害が拡大するという皮肉な状況を招いている。

人的制約と責任の所在が曖昧な新制度

   被害が広がる状況を受け、北海道は2024年4月から「北海道ヒグマ管理計画(第2期)」を開始した。

   この計画では、地域を「保全優先地帯」「緩衝地帯」「人里近接地帯」などに区分し、地帯ごとに捕獲の重点を変えるゾーニングを導入している。

   特に緩衝地帯では箱ワナによる捕獲を進め、モニタリングによって個体数の推移を把握し、次年度の目標を見直す「順応的管理」を行う仕組みだ。

   また、捕獲を実施する市町村には補助金制度も整備された。

   さらに、2025年9月からは国による「緊急銃猟制度」が施行され、市街地や生活圏でのヒグマ駆除が一定の条件下で可能となった。

   ただし、これらの制度については、現場の人的リソース不足や責任の所在が不明確であることを懸念する声も少なくない。

日本型「クマ対策」モデルの構築を

   このように、国も自治体も「被害発生後」から「予防」へと対策の重点を移しつつあるが、実効性のある体制が確立されたとは言い難い。

   クマ被害の予防策を制度として確立している国のひとつにスウェーデンがある。

   スウェーデンでは、ブラウンベア(ヒグマ)に対して許可制の年次狩猟制度を運用し、個体数の調整を行っている。

   EUの「生息地指令(ハビタット指令)」などの保護規定を遵守しながら、個体数をモニタリングし、地域ごとに上限頭数を設けて狩猟を認める制度だ。

   しかし2024年には、狩猟によって捕獲された頭数が国内の推定生息数の約20%に達し、生態系への影響を懸念する声も上がっている。

   このように、海外でもクマの保護と管理のバランスをめぐる議論は続いている。日本もこうした海外の事例を参考にしつつ、地域特性を踏まえた「日本型クマ対策モデル」の構築を急ぐべきだろう。

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