公明党が連立離脱「政治とカネ」自民から十分な回答なく 高市総裁を後押しして「関係解消」望む声もあった

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   公明党の斉藤鉄夫代表は2025年10月10日午後の党首会談で、高市早苗・新総裁に対し、「政治とカネ」の問題で十分な回答がなかったとして、26年間継続してきた連立を解消することを伝えた。これで両党の選挙協力関係も「白紙」に戻すことになる。立ち上がったばかりの高市自民党には、大きな打撃となる。

  • 26年の自公連立に終止符が打たれた。自民党の高市早苗総裁(左)と公明党の斎藤鉄夫代表
    26年の自公連立に終止符が打たれた。自民党の高市早苗総裁(左)と公明党の斎藤鉄夫代表
  • 櫻井よしこ氏(2016年撮影)
    櫻井よしこ氏(2016年撮影)
  • 26年の自公連立に終止符が打たれた。自民党の高市早苗総裁(左)と公明党の斎藤鉄夫代表
  • 櫻井よしこ氏(2016年撮影)

「互いの協力票が消えると当選できない」議員

   公明党は、9日夜に全国代表者協議会を開き、地方議員の意見を聴取したが、「26年の信頼関係は簡単には崩れない」「先行して玉木雄一郎・国民民主党代表と秘密会談をしたり、裏金問題関連の対応など、信頼関係はどうなる」との意見が交錯した。

   自民党と公明党は、もともと安全保障問題などで、政策理念が異なっていたが、連立を重ねるうちに、全国で「選挙協力」調整が進み、現状では「互いの協力票が消えると当選できない」議員が少なからず存在している。

   一方で、「公明党とは連立を解消すべき」と、高市総裁の背中を押す意見もある。保守派のジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「斎藤氏の3つの懸念事項、年来の公明党の振る舞い、どこからみても自公連立は解消するのが日本国の為になると私は考えている」としたうえで、国民民主党や維新との連立を勧めている。(「週刊新潮」2025年10月16日号)

弱くなったといえども小選挙区1~2万の学会票

   頼みにする自民議員が少なくない自公連立政権のきっかけは、1998年の参議院選での自民党の過半数割れだった。退陣した橋本龍太郎政権の後継の小渕恵三政権から打診を受け、自由党をクッションとして「自自公連立政権」に参画。1964年の結党以来、対立してきた自民党と初めて組んだ。

   しかし、連立が続くと、看板にしてきた「平和の党」に疑問がつく場面が増え始めた。2014年には、集団的自衛権の行使容認をめぐって、公明党が憲法解釈変更の閣議決定を認めた。ただ、公明党の交渉で、集団的自衛権の「全面的容認」ではなく「限定容認」とした、とされた。が、その後は、安保法制などの対応で「追随」ばかり、との批判・不満が支持層に膨らんだ。

   その半面、自民党内では「衆院小選挙区で1~2万票ある」とされる公明党支持層の組織票を頼りにする議員が少なくない。その代わり、自民党の支持者に「比例区は公明党へ」と呼びかける「依存関係」だ。ただ、これまで自公連立にはいろいろ危機が言われても結局は戻るという「(どこまでもついて行きます)下駄の雪」と言われた関係にも、変化が出てきた。

   創価学会の選挙支援は、高齢化の影響もあって、往年の勢いが見られなくなってきた。公明の衆院比例区の得票数は、05年の899万票を頂点に減り続け、24年秋の衆院選では596万票。山口元代表の後を継いだばかりの石井啓一氏(前代表)が小選挙区で落選 公示前の32議席から24議席に減らした。裏金問題が影響したと公明党、創価学会内部には不満が溜まっていた。

   日経新聞(10日朝刊)の分析によると、公明党との選挙協力が解消された場合、24年の衆院小選挙区では「2割の自民党候補が落選する」と出た。全国289小選挙区のうち、自民党は132で勝利したが、公明党が離れた場合、「2割の25区」で自民党候補は2位の候補の票数を下回る。公明党は、候補を立てた11小選挙区で4勝しかできなかったが、連立を離れればここでも自民党は候補を立て、公明党勝利は絶望的になるという。

「玉木氏を野党統一候補に」と「国民」をゆさぶる立憲・安住幹事長

   公明党の斉藤代表は、石破茂首相にとって「ケミストリー(相性)が合う」そうだ。(朝日新聞2025年1月18日)。お互い少数与党のトップとして、何度も食事をともにしながらやってきた。25年12月に、官邸を訪れた斉藤代表は「何としても選択的夫婦別姓の導入をやりましょう」とも話し合った。本音では賛成の石破が、党内保守派の意向もあって、なかなか踏み切れないこともわかっていた。その、石破首相が間もなく退陣する。

   そして斉藤代表は高市新総裁と向き合った。10月8日配信のYouTube番組では、「連立をしないということは(臨時国会の首相指名選挙で)高市早苗と書かないということだ」と、斉藤代表はあえて発言した。

   立憲民主党の安住淳幹事長は、8日の国民民主党幹部との会談で榛葉賀津也幹事長に、首班指名の野党統一候補として、玉木雄一郎代表も「有力候補と考える」と伝えた。榛葉氏は「冗談半分で言う話ではない」と答えたそうだが、高市自民党との連携に前のめりになる国民民主党に対し、「公明党が離脱したら、国民民主でも過半数にはならない」という「首班指名投票の現実」を示して、けん制した格好だ。

   ちなみに、衆議院の議席数(過半数233)は、自民党・無所属が196、公明が24、国民民主27、日本維新の会30で、公明党が離脱すれば、国民民主が参加しても過半数にはならない。

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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