フリマサービス大手のメルカリが2025年10月上旬、悪質な転売行為の規制を強化する方針を発表した。具体的には、不正出品や価格の乱高下が発生する商品について、出品禁止などの対策を講じるとしている。NintendoSwitch2など人気商品の転売がSNS上で批判を集める中、今回の規制強化で転売行為はなくなるのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は取材に対し、一部のグレーゾーンは残るものの、「転売行為は基本的に近い将来なくなるだろう」との見解を示した。「2ちゃんねる」と「メルカリ」には同様の構造があるメルカリの25年10月9日の発表によれば、取引を巡る3つの基本原則を21年に策定。安全、信頼、人道的という3つを満たしている場合、基本的には出品できるとしていた。これまでも、政府備蓄米や空薬きょうなどの出品は禁止していた。今回の発表では、この基本原則を重要な指針として維持しつつも、原則の枠外で個別に判断するとしている。それが、不正出品やトラブルの急増、極端な価格の乱高下などが発生する商品への対応だ。同社は、「マーケットプレイス内の『安心・安全』が著しく損なわれる可能性がある商品については、出品禁止などを含む対応を行う方針といたしました」と報告している。前掲の井上氏は、今回の対応について、「コロナ禍のときと比較すると対応が早くなっている。ゲーム機や記念グッズなど価格変動の要素が大きい商品に対して強い態度を見せているため、一貫して転売に取り組んでいるイメージを抱かせる」との見解を示す。だが最近の事例では、メルカリの転売対策を疑問視する声なども上がっていた。こうした声について井上氏は、ネット掲示板「2ちゃんねる」を引き合いに出しながら、メルカリ側の判断の難しさを説明する。井上氏によれば、2ちゃんねるは「場の自由」「場の責任」「法律」という3つのバランスを取る必要があったとする。「何を言ってもいいという『場の自由』の話と、誹謗中傷による名誉毀損罪に問われかねないという『法律』の話と、その場を管理するかどうかという『場の責任』の話で、その3つのバランスを取る点がある」利益とブランド力、行政側の指導のバランスを取ろうとしているこの話を踏まえて井上氏は、メルカリにも同様の構造があると指摘する。つまり同社においても、(1)グレーゾーンを許容すること(2)行政側からの指導があること(3)許容に伴ってユーザーからの評価が下がること――の良いバランスを目指さざるを得ないという。「転売が明らかな法律違反なのであれば禁止できるが、これはグレーゾーンです。『常識的におかしい』という話について、企業の判断は難しいと思います。警察からの指導があれば対応しやすいのですが、1企業の判断だけでは踏み込みづらい」これらに対処することによってメルカリは、企業の利益とブランド力、行政側の指導のバランスを取ろうとしていると、井上氏。「コンプライアンスを遵守する中で、ブランド価値を損ねないように場を運営していくことを、メルカリは今目指していると思います」今後の転売行為については、一部のグレーゾーンは残るという。自然に値上がりするプレミア価格と、意図的に高値で売る転売の境界線が曖昧だからだ。だが、「プラットフォーム側は転売を撲滅したいと思っていると思う」とし、「基本的に近い将来なくなるだろう」との見解を示す。また井上氏は、フリマ業界全体でも「同じような基準で足並み揃えるだろう」とし、メルカリ以外での転売行為も減っていくとの考えを示している。
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