共産党の日刊機関紙「しんぶん赤旗」が2025年11月4日、公式サイトで日本維新の会の藤田文武共同代表に宛て、「記者の名刺画像公開の削除と謝罪を求める申し入れ」を公開した。藤田氏は同日、国会内で会見を開き反論。SNSでも双方の応酬が続いている。「不誠実かつ一方的なやり方は、係争中の週刊文春と同じ」発端となったのは、しんぶん赤旗日曜版が10月29日配信の電子版で公開した「維新藤田共同代表重大疑惑 公設秘書側に公金2000万円『身を切る』どころか身内へ税金還流」とのスクープ記事だった。藤田氏が17~24年の約7年にわたり、自身の公設秘書が代表を務める会社にポスター印刷費などの名目で約2000万円を支出していたと報じたものだった。これに対し、藤田氏は30日にXで反論。「悪意のある税金環流のような恣意的な記事ですが、すべて実態のある正当な取引であり、専門家にも相談の上で適法に行なっているもの」とし、経緯を説明した。さらに、赤旗側の取材方法について「質問状の回答期限が翌日までという不誠実かつ一方的なやり方は、我が党が名誉毀損で係争中の週刊文春と同じです」と批判した。その上で「短期間の要求期日内に返答」したが、「回答を全く反映しない記事を確認し、公平性が皆無だとよくよく認識しました」とし、質問状や記者の名刺の画像の一部を公開した。「個人情報の無断公開によるプライバシー侵害」赤旗側は11月4日、編集局長・小木曽陽司氏と同日曜版編集長・山本豊彦氏の連名で、一連の藤田氏の行動について「極めて問題がある」として画像の削除と謝罪を求める申し入れを行った。名刺の公開について「政権与党幹部によるジャーナリズムの取材活動への重大な妨害、威嚇行為」「個人情報の無断公開によるプライバシー侵害」とした上で、「貴殿のX(旧Twitter)アカウントに投稿された、記者の名刺画像を含む投稿を速やかに削除すること」「記者個人の情報を公開したことについて、赤旗編集局および当該記者に対して謝罪すること」「今後、取材活動を行う記者個人を標的とするような行為を行わないこと」を要求。対応がない場合は法的な検討に入るともした。「しんぶん赤旗というのは報道機関ではありません」藤田氏は同日の会見で、申し入れを拒否した。公開した名刺の画像にはモザイクを入れており、投稿した範囲の内容は「公開情報」だと説明。さらに、「しんぶん赤旗というのは報道機関ではありません。非課税である事業をされている政治活動です」と主張。「公平な報道ではなくて、政治的主張です。ですから共産党さんに私どもが何回も質問されて、答える義務はないという、そういう認識」とした。今後については、「今後は共産党および、しんぶん赤旗の質問状には一切返答しないことを申し添えたいと思います」ともしている。「一般新聞とは、まったく性格の異なる政党の機関紙」しんぶん赤旗は共産党の機関誌である一方、25年5月には日本外国特派員協会から「報道の自由賞・日本賞」を受賞している。こうした背景から、共産党側は赤旗が報道機関だとする立場をとっている。しかし、共産党を除名された松竹信幸氏をめぐる論争では、赤旗の誌面で「一般新聞とは、まったく性格の異なる政党の機関紙を同列において、反論掲載を求めることは成り立つものではありません」と主張したこともある。牧原秀樹元法相は5日、赤旗と藤田氏をめぐる問題を報じた記事を引用し、「昔、私も嫌がらせのような毎日新聞記者の取材を受け、取材から半年経ってから嫌がらせのタイミングで記事にされたことがありました。本当に失礼な人たちがいるのも事実です」と振り返った。その上で、「よほど記者の名前とそのやり方を公表してやろうと思いましたが、思いとどまり以降も同社からの取材にも真摯に対応してきました」とした。「赤旗新聞が普通のマスコミとは全く思いませんが、名刺投稿は微妙です」としつつ、「でも、一度訴訟にして裁判所の確定的な判断を出してもらうことも取材の自由とプライバシー権とのあり方を考察する意味でも必要かもしれません。藤田さんには是非戦ってもらいたいと思います」と後押しした。