「いじり」と「いじめ」に境界線は引けるのか? この難しい問題を2025年11月7日放送の情報番組「サン!シャイン」(フジテレビ系)は取り上げた。25年の全国高校サッカー大会出場が決まった宮城県の強豪仙台育英高校サッカー部での「いじめ問題」についてだ。
被害者の生徒は現在も通院中
冒頭にアナウンサーがいじめ発覚までの経緯を説明する。被害にあった高3男子が23年の高校1年時に「うざい」などの暴言を複数の部員から受け、24年、医師から「抑うつ症状」と診断された。そこで学校側に相談、学校側がいじめ防止対策推進法に基づき「保護」扱いとした。25年10月にあらためて男子生徒が学校側に訴え学校側が「いじめ重大事態」として「調査」を開始した、という。
番組では11月1日に校長名で発表された「いじめ重大事態報告に寄せる校長所見」を紹介する。
「本件体育会サッカー部において過去に『いじり』と呼ばれる不適切な言動が繰り返されていたことが判明いたしました」
「加害者とされた同級生の中には『いじり』と『いじめ』との間に明確な線引きをせず、他者の尊厳を損なう行為の重大さに対する理解が欠如していたことが推察されます」
といった内容で、被害者の生徒は現在も通院中だという。
MCの谷原章介さんは「すごく何か後味の悪い結果になった」と話した。校長所見を読んで「違和感がある」と前置きし、「(この事案は)実態としていじめだったのに『いじり』という言葉から入ることによってこの問題をソフト化しているのではないか」と指摘した。
「言われた方がいじめだと思えばいじめ」
俳優の梅沢富美男さんも「いじりとかいじめとか、『俺はいじっているだけだよ』と言って本人はいじめているという自覚がない。被害生徒が訴えたとしてもスポーツの世界だと学校側が(問題を)でかくしたくないだけ」と断じた。
「いじり」と「いじめ」の違いを、教育評論家の松本肇さんによる定義を紹介した。「いじり」は仲間内で軽いからかいや冗談などお互いが笑い合える関係で成立するという。それに対し「いじめ」は他の生徒に対して心理的または物理的な影響を与え苦痛をもたらす行為だという。松本さんは「(仙台育英の)校長先生も線引きすることはものすごく難しいと思う」と話した。
谷原さんは「これって、やる側がいじりといじめの線引きをするのではなく、やられた側がするべきことだと思うんです。言われた方がいじめだと思えばいじめになる」と話した。
いじりといじめについて聞かれたフリーアナウンサーの神田愛花さんは「仕事でもプライベートでもいつもいじられる側にいるので」と話して自身の「いじり」論を展開した。
「いじりというのはいじられる側がうれしいとかありがとうとか思う場合。プライベートでもいじられると『あ、この人、私に心を開いてくれたんだ』と私は思う」
神田愛花さん「嬉しいか嬉しくないかが一つの基準」
谷原さんが「神田さんがこのいじりは嫌だなと思ったことはありますか」と問うと、「ありますあります。いじられる側がいじめになっていると感じれば私は自分で相手に言うことができるし、そういう集団から離れるという経験もある」と話した。「いじられる側が嬉しいか嬉しくないかが一つの基準。(仙台育英の問題も)いじりなのかどうか(被害を受けた)生徒本人に聞いて大人たちがしっかり把握しておかなければいけない」と話した。
「いじり」と「いじめ」はたった一文字違いだが、内輪の笑い話になるのか重大問題になるのか、大変な違いがある。
(ジャーナリスト 佐藤太郎)