2025年11月7日放送の情報番組「ノンストップ!」(フジテレビ系)が取り上げたのはシニア層が日常生活で気になる「認知症」問題。物忘れなのか認知症なのか、出演者の体験も披露された。
出演者全員が「え~っ」と驚きの声
スタジオで驚きの声があがったのはゲストの磯野貴理子さんの体験だ。ある番組でお笑いコンビ「EXIT」と共演したが、そのコンビ名が出てこなかった。同席していたゲストに「磯野さん、認知症になりかけかも」と言われたという。MCの設楽統さんも「あるよな」と同感。それを聞いたコメンテーターのキャシー中島さんは「家に冷蔵庫と食器棚が並んで置いてあり、同じ方向に開くんだけれども食器を入れようと思って冷蔵庫を開けてたなんていうことがある」と話した。
話はどんどん進んで、磯野さんが「電車に乗っていて降り損なうことが増えた」と発言した時、出演者全員が「え~っ」と驚きの声をあげた。「これ怖いでしょ、大丈夫かな」と磯野さん。設楽さんは「それダメですよ」とNGを出した。
キャシー中島さんが「頭の中がいっぱいになると整理をするのがへたになってきて何がなんだかわからなくなってきて、昨日行ったところと同じところで降りたらいいのか次のところかわからなくなることがある」と、おかしな話が次々と出てくる。
加齢による物忘れと認知症につながる物忘れは違う
順天堂大学医学部名誉教授で認知症専門医の新井平伊さんが解説した。
「昔は早期発見早期治療で『認知症を早く見つけよう』だったのですが、今は早期予見早期予防という時代になりました」と、認知症になる手前の予備軍の状態である「軽度認知障害」について触れ、2022年の約560万人から、2040年には約610万人になるという研究(九州大学二宮利治教授の研究)を紹介した。
アナウンサーが「ひとえに物忘れと言っても加齢による物忘れと認知症につながる物忘れがある」と話し、新井名誉教授の解説を紹介する。加齢による物忘れは「経験したことが思い出せない」(例:朝食に何を食べたか思い出せない)、認知症による物忘れは「経験したこと全体を忘れている」(例:朝食を食べたことを忘れている)を挙げた。
脳の活性化につながる「デュアルタスク」とは何か
新井さんは「一言でいうと加齢によるものは『ど忘れ』です。別の時に思い出すかもしれないし、ヒントを与えられると思い出すので大丈夫」と話す。磯野さんは「私はこれ聞いてだいぶほっとしています。さすがにご飯食べたことは覚えているものね」と晴れやかな表情に戻った。キャシー中島さんも「さすがに60代の時にちゃんと覚えていたこと、当たり前のようにやっていたのが70歳の壁を越えたらできなくなるということが多くなりました」と話した。
新井さんは認知症を予防する生活習慣としてバランスのよい食事と運動習慣が大切だと話す。また、脳の活性化のために「デュアル(二重)タスク」という2つの作業を同時に行うことを提唱する。
たとえば、ウオーキングしながら計算する、歌いながら手足を動かすなどだ。「家事」は「作業をしながら同時進行で脳も考えているのでいい」と勧めた。認知症予防には、脳だけをトレーニングするのでなく、日常生活の見直しが必要だという。
(ジャーナリスト 佐藤太郎)