高市早苗首相による台湾有事をめぐる国会答弁について脅迫とも取れる発言を行い、後に削除していた中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事をめぐり、与野党から厳しい声が相次いでいる。「先日の日中首脳会談や日中関係を毀損する行為」薛氏の投稿は、朝日新聞デジタルによる「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 武力攻撃の発生時」の見出しを引用し、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」とし、怒り顔の絵文字を添えていた。薛氏は9日夕方までに投稿を削除した一方で、「中国内政への干渉、国家主権の損害、台湾両岸統一の妨害などは一切許さい」(原文ママ)などと主張。このほか、自身の主張を支持するような投稿をリポスト(拡散)している。自民党広報は11日、Xを通じ「ペルソナ・ノン・グラータを含めた対応を行使するべき 中国の総領事の不適切投稿を受けて決議を採択」との声明を公開した。薛氏の投稿について党外交部会と外交調査会が避難決議を採択したとするもので、「会議の冒頭に小林鷹之政調会長は『自民党として看過できない。中国の適切な努力がなければ、ペルソナ・ノン・グラータ(好ましくない人物として国外退去を求めること)を含めた対応を政府に求める』と、事態の深刻さを強調しました」という。さらに、出席議員からは「この投稿は高市総理個人だけにとどまらず、日本国、日本国民に対するものだ」「先日の日中首脳会談や日中関係を毀損する行為」「主権国家の権利であるペルソナ・ノン・グラータを行使するべき」という声が相次いだとして、尾﨑正直内閣官房副長官に決議を提出したとした。「とんでもない暴言。こんな総領事は日本に必要ない」野党からも、厳しい反応が相次いでいる。立憲民主党の泉健太前代表は10日、自身のXを更新し「とんでもない暴言。こんな総領事は日本に必要ない。政府は早期にペルソナノングラータで中国に帰任させよ」とした。公明党の斉藤鉄夫代表は、11日にXで「中国総領事による一連の発言は、極めて遺憾です」と主張。「外交官としてあるまじき言動であり、党代表として強く抗議します」とし、「日本政府として、厳重に抗議したことは当然の対応です」との見解を示した。国民民主党の玉木雄一郎代表は、11日の会見で言及。「彼(薛氏)とは長い付き合いでもあるんですけど、ひどいですね」とした上で、「昔はね、ああいう感じの人じゃなかったんですけど」と振り返った。薛氏のスタンスについては「いわゆる『戦狼外交』ということを、あえて意図的にやっているのでは」とし、「だから過剰に反応する、反応することも含めて、向こうの戦略に乗ることは控えるべき」だとした。その上で、今回の投稿については「場合によってはペルソナ・ノン・グラータに当たる。職業外交官として、公館の長としては極めて不適切」との見方を示し、「今回の発言は度を越している」としている。立憲・野田佳彦代表は同日放送の報道番組「BSフジLIVE プライムニュース」(BSフジ)に出演し、小林氏の発言に「気持ちはわかる」とコメントした。一方で、「でも党の重たい役を担っている人としては、一方でそろそろ火消しに当たっていく構えに持って行かないと」と発言。「厳しく抗議はしないといけないと思う」とした上で、「ペルソナ・ノン・グラータまでいくと、よりエスカレートしていく可能性があると思う」と慎重な対応を求めた。
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