2026年3月に開幕予定の2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を前に、日本代表がかつてない"主軸不在"の危機に直面している。アメリカ大リーグ(MLB)、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が、大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希の3選手について、個人的な意見としてWBC出場を懸念するコメントを出したことが波紋を広げているのだ。ドジャースにとっては投げないことがベスト2025年11月14日に配信されたABEMAの独占企画『おはようロバーツ』で自軍の3人のWBC出場について聞かれたロバーツ監督は、「出場を選択するならサポートする」とコメント。しかしそのうえで、「個人的にはWBCに出場しないでほしい。WBCは重要な大会だが、ドジャースにとっては投げないことがベスト」と明言した。その理由を「由伸はたくさん投げたし、朗希はけがから復帰したばかり。翔平もけがから復帰して多くのイニングを投げた。2026年のシーズンに備えてゆっくり休んでもらいたい」と説明。大谷は二刀流だが、3人とも投手である。投手の肩肘は消耗品、しかも中心的な活躍をした選手だけに、3連覇を狙う監督としては当然の気持ちと言えるだろう。キャンプを重視して出場を辞退した千賀滉大また、打撃陣に関しても大きな不安材料がある。現在、村上宗隆が東京ヤクルトスワローズから、岡本和真が読売ジャイアンツから、それぞれポスティングでMLB挑戦を表明している。もし来春までにMLBの球団に入ることになれば、WBCは春のキャンプの時期にあたる。となると思い出されるのが2023年大会。この年に福岡ソフトバンクホークスからニューヨーク・メッツへ移籍した千賀滉大が、キャンプを重視して出場を辞退したケースだ。この時期は、時間的な問題、調整の問題からいっても外部の大会に出場することは難しい。となると、打撃の軸を2人(大谷も入れると3人)失いかねない状況となる。また、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有は右肘の靭帯補強手術で来季全休の見通し、ペッパーミル・パフォーマンスで人気となったセントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバーも両かかと手術の影響で出場が絶望的と報じられている。メジャー選手1人の2017年のケースも一方、アメリカではアメリカン・リーグMVPを獲得したニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジがアメリカ代表の主将に就任し、ナショナル・リーグで最優秀防御率を記録したピッツバーグ・パイレーツのポール・スキーンズなどの出場が見込まれている。このような事情を踏まえると、来春の日本代表チームに対する危機感がつのる。だが、こうした危機は2017年大会にもあった。メジャー所属選手として出場したのは青木宣親(当時ヒューストン・アストロズ)のみだったが、日本は準決勝まで進出し、国内組中心でも戦えることを証明した。国内のプロ野球でも新たな力は続々育っている。実際、11月の10・11日に行われた韓国との強化試合では、2024年ドラフト1位組の佐々木泰(広島東洋カープ)、西川史礁(千葉ロッテマリーンズ)など、若手選手が大活躍を見せた。たしかに、当初の構想から戦力ダウンは免れないだろうが、国内プロ野球の選手だけでも侍ジャパンは強いことをアピールするチャンスでもある。まだまだ不透明な点は多いが、来春のWBCは日本野球の強さを、真の意味ではかるための大会になるかもしれない。
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