2025年10月21日、日本初の女性首相が誕生した。新たな風を吹かす高市早苗氏に国民は大きな期待を寄せ、首相が織りなすもろもろの素早い行動には驚くばかりである。政治に興味を持ち始める若者も増え、日本が今後どうなるか見物といったところだろう。
期待を寄せる国民が続々と現れる一方で、一部のクリエイターは高市氏が2010年以前に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年ネット規制法)という法案の中心で活動していた過去を指摘する。
ようするに、青少年を守るため、「漫画やアニメ、ゲームなどに表現の規制が入るのではないか」と危惧する声が上がっているのだ。
そもそも成人向けコンテンツはインターネットが普及してから簡単に未成年の目に触れるようになったため、ずいぶんと昔から問題視されていたのだが......。
いよいよ規制が始まれば、性的描写や同性愛の取り扱い、残酷ゲームなどにも影響を及ぼす。これが商いをするクリエイターたち、趣味の範囲で活動する同人作家、オトナ用作品を好むファンにはハイダメージだ。
今すぐに規制はされない? 成人向けコンテンツの未来
多くのクリエイターが危機感を覚えているが、筆者である私個人の意見としては「今すぐに規制は入らない」と予想する。
首相が以前より成人向けコンテンツに対し厳しい目を向けていたことは確かだが、青少年ネット規制法施工開始よりはや18年が経過。現時点ではこれといった動きがなく、規制の詳細も未発表なことから、明日明後日に状態がガラリと変わる可能性は著しく低いだろう。
SNSでは不確定事項をあたかも決定かのようにささやくユーザーが多く、一部では混乱を招いてしまっている。誤情報も流れるが、あくまで首相は「規制推奨派」というだけで、「今すぐに規制を始めます」とはしていない。きっとしばらくは現状維持が続くのだろうけど、今後も今の状態が続くと断言できないのが難しいところ。
最近では全年齢向けのメディアでアダルト漫画のバナーが派手に登場し、大きな問題となった。対象となったいくつかの企業は早急に対処したものの、根絶とは程遠いレベルで、まだまだ閲覧できてしまう例が非常に多い。
成人向けは断固として子どもに見せてはならず、人として意識のハッキリしてきた中学~高校生にも配慮すべきだ。「誰もが気軽にアクセスできる場所に、成人向けコンテンツを置くのはいかがなものか」と訴える人は多く、この考えは正論中の正論。オトナたちが目先の利益だけ追って好き放題すると、最も恐れる「規制」がすぐにやってくるかもしれない。
私なりの考察をまとめると、以下のようになる。
●現時点ですぐに規制は入らない
●しかし、先のことはわからない
●ネット広告などで実際に被害が起きると、規制が早まる可能性も
成人向け作品規制が与える影響は大きい
成人向けコンテンツに全く触れない人からすれば、規制など何も影響がないものだ。むしろ未成年の将来を考慮して、規制賛成派の声を上げるかもしれない。
筆者も元セクシー女優という成人向けド真ん中にいたが、オトナ用の作品があちこちの目に触れるのは反対だ。販売規制や年齢確認の強化などは大いに賛成なものの、表現の規制に関しては少しばかり頭を悩ませてしまう。
アレもこれもダメと締め付ければそちらの道で稼ぐ人々の仕事が減るほか、「余計な抜け道が作られて話が複雑化するのではないか?」と考えてしまうのだ。
関連する話題として、近頃は風俗店の摘発が多い。職場をなくした女性たちが別の店舗へ移動するかと思いきや、一部はSNSでの個人売春や大久保公園の立ちんぼなどに流れたという。ようするに、厳しくすればするほど曲がった方向に走る人間も出るため、クリエイター間でも同じような事例が発生する可能性がある。大抵何かトラブルが起きるとその裏では「悪いコト」を考える人間が現れるため、表向きだけ綺麗にするようでは意味がないのだ。
また、成人向けコンテンツといえど、一種の芸術であることに間違いはない。表現=個性なので、NG事項を増やせば全てが似たり寄ったりになるだろう。すると、どうなるか? 他作品と差別化が図れないため売り上げが偏り、職を失う人々が出てくるかもしれない。
性描写や残酷描写の支持率はなかなかのもので、エロとグロで経済が回っている現実もあるといえるだろう。年に2回開催されるコミックマーケットなどはこの典型例で、1回の開催で100億円以上の売り上げを誇る。成人向けコンテンツが世の中の一部を潤しているため、規制の仕方や範囲も熟考する必要があると私は思う。
インターネット普及後は「誰でも閲覧可能」になり、成人向けコンテンツが未成年への悪影響を及ぼす事例が本当に増えた。昔のように店頭で雑誌を買わないとお目にかかれない「閉ざされた世界」ではないとなると、規制が入るのもうなずける。
しかし、何でもかんでもNGを突きつければ解決するわけではない。むしろ事態が別の方向へ走り、悪化しては新たな問題が浮上してしまう。今後、高市氏がどのような決断を下すか気になるところだが、クリエイター達も騒ぐだけではなく、いちオトナとして正しい行動を取るべきなのだ。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。