中国総領事の斬首投稿について、前回の本コラムでは総領事にペルソナ・ノン・グラータを使うまでもなく、SNSでやり合う程度でいいと言った。高市政権は冷静で、なんらアクションをとっていないが、中国は中国人の日本への渡航自粛、留学生にも日本行きを制限し出した。この措置について、2兆円の損失とかいうが、実際に誰が困るかだ。日本国内の中国人による経済網への打撃が大きい中国による日本渡航自粛が、思いの外、日本への打撃がなく、むしろ今形成されている日本国内における中国人による経済網、「一条龍」への打撃が大きい。例えば、インバウンドでの団体旅行客の訪日旅行では、団体旅行の場合、中国の旅行会社で手続きして来日するが、日本到着後、受け入れるのは中国系旅行会社であることがほとんどだ。中国系のお土産屋で買い物して、中国系の決済カードなので、日本には実質的にお金は落ちない。個人での訪日客も、中国系航空機で来日し、到着後は違法な中国系白タクで、中国系民泊に宿泊する。それらの決済は中国系なので違法は発見しにくい。この中国人の日本渡航自粛は、習近平主席による高市アシストだ。これを中国が言い出したのはラッキーである。高市首相がやりたいことが通りやすくなった。オーバーツーリズム是正になるし、経営管理ビザ見直しや不動産規制もやり易くなる。このまま中国人が来日しないと固定資産税未納で不動産に没収になる可能性もある。そこで、中国は本産水産物の輸入停止を急に言い出した。今月から中国側は宮城や福島など10都県を除く日本産水産物の輸入を再開していたが急な方向転換だ。しかし、中国への輸出が止まっている間に、日本企業は別の販路を開拓済みである。ここでも中国はヘマをしている。なぜ中国はこんなに怒っているのか相次ぐ中国の自滅策を見ると、冷静な高市首相は運を確かに持っている。なぜ中国がこれほど怒っているのかは謎だが、ひょっとすると、中国は米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が行った台湾有事シミュレーションを意識しているのかもしれない。1月9日に公表されたものでは、全24のシナリオのうち、中国の台湾侵攻が成功するのは「米が台湾支援をしない」「日本が在日米軍基地使用を拒否」の2シナリオのみだ。日本がアメリカに協力すると中国の勝ち目はない。高市首相はこの中国の痛い点をついたので、習近平主席は怒ったのではないか。なお、問題の薛剣(せつけん)総領事発言はなかったものにするため、同氏は在任4年半なのでしれっと帰国し辺境送りだろう。++ 高橋洋一プロフィール高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。
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