中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射をめぐり、小泉進次郎防衛相の対応が注目を集めている。中国側に対して毅然とした態度を見せたことを「覚醒した」と評価する声がある一方、説明が二転三転していることから、先行きを不安視する声も根強い。
中国への初期対応では毅然とした態度に喝采
高市早苗首相の国会答弁に端を発して日中関係が悪化する中、レーダー照射は2025年12月6日に起きた。沖縄本島南東沖の公海上空で、航空自衛隊F15戦闘機に対し、中国軍機が断続的に約30分にわたりレーダー照射をしたとされる。
小泉防衛相は7日未明の緊急会見で「危険な行為だ」と批判。だが中国側は9日、訓練実施を事前に通告したとする音声データを公開した。音声によると、中国軍とされる男性の音声が中国語で「計画に沿って艦載機の飛行訓練を実施する」と伝え、自衛隊とされる女性の声が「こちら日本の116艦。メッセージを受け取った」と英語で答えていた。
この音声に対し、日本のSNS上では真偽を疑う根拠不明の憶測も飛び交う事態に。小泉防衛相は10日の記者会見で「中国国営メディアが報じた音声の一つ一つについてコメントすることは差し控えるべき」とした上で、
「こうした航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為について、再発防止を引き続き厳重に求めていく」
と述べた。
これまでインターネット上では、「進次郎構文」など笑いのネタにされることが多かった小泉防衛相だが、この態度には喝采も。「完璧!自信に満ちている発表」「覚醒しすぎ」「こんな頼りになる防衛大臣いた?」などの反応が上がった。
中国側から音声が公開されると説明が変わる
一方で、小泉防衛省の説明が二転三転しているという見方も。9日の時点では中国側の訓練情報について、
「事前に通報されていたとは認識していない」
と述べていた。だが、中国側から音声が公開された後の10日になると、
「中国海軍艦艇から海上自衛隊の護衛艦に対して、飛行訓練を開始する旨の連絡があり、その内容を聞き取った」
との説明に変わった。
その上で小泉防衛相は「どのような規模で、どのような空域において訓練を行うのかという具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、また訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム(航空情報)もなく、船舶等に示す航行警報も事前に通報されていない」と主張した。
これに対してSNSでは「通告はあったが具体的ではなかった、と説明が後退。認めてしまっている」「しれっとトーンダウンするなや」など厳しい声も相次いだ。
中国外務省の報道官からも、「日本側は今になって認めた。矛盾している」と、痛いところを突かれてしまった。
「習近平国家主席とも良好な協力関係」
一方で小泉防衛相はオーストラリアやイタリアの国防相、北大西洋条約機構(NATO)事務総長と意見交換。12日には米国のピート・ヘグセス国防長官と電話会談した写真を自身のX(旧Twitter)に投稿し、自らの正当性をアピールした。ヘグセス国防長官にお揃いをプレゼントしたスカジャンを画面の奥に写り込ませるという細かい設定も忘れなかった。
だが、頼みの綱とも言える米国のドナルド・トランプ大統領の反応は薄い。ホワイトハウスの報道官は11日、日本と中国との関係について「トランプ大統領は日本との強固な同盟関係を維持しつつ、米国が中国と良好な協力関係を築く立場にあるべきだと考えている」と述べた。中国について、「トランプ大統領は習近平国家主席とも良好な協力関係を築いていて、このことは米国にとって有益だと確信している」と中立的な態度を示した。
この動きに対し、米国外交に詳しい上智大の前嶋和弘教授は自身のX(旧Twitter)で「距離を置こうとするトランプをいかに日本側にとどめていけるか。同盟国なので、本来は全く問題にならないことにまで配慮しながら外交を急がないといけない状況に」と指摘した。