人の欲望が露わになる場所、それが飲み屋をはじめとした夜のお店である。男性は「普段の顔」を忘れてお酒を飲み、美女を前にして大興奮。気づけば自制心をすっかり忘れ、はしゃぎ倒すおじさんなど歓楽街ではよくある光景の一部に過ぎない。こんなおじさんは夜のお店で嫌われるただ騒ぐだけなら、黒服もキャストもさほど気に留めない。問題はみんなに嫌がられるタイプの困ったおじさんで、彼らは「お客様は神様」といった図太い精神を持ち、店の人間から危険人物扱いされる。昼の世界では通用しないであろう振る舞いを平然と行い、自分がルール破りであることに一切気づかないのだ!SNSでナイトワーカーが客に対する不満を漏らし、発言に群がるおじさんが「嫌なら仕事をやめろ」と噛みつく様子を私自身もごまんと見てきた。「キャストVSおじさん」の仁義なき戦いは終わりが見えず、この手のバトルは毎日のように繰り広げられている。確かにお客様あってこそのナイトワーカーなのだが、お金を払ったからといって己の欲望を最優先してはならない。女性はおろか、裏方である黒服までもが嫌悪感を覚える客の特徴は見事なまでに共通しており、「みんな『嫌われるための教科書』でも読んできたのか!?」とあらぬ疑いをかけたくなるほどだ。お触りが酷いセクハラおじさん昨今はセクハラ問題が深刻であり、昼の世界では「どこからどこまでがセクハラに該当するのか」というラインが非常に難しい。最近では女性社員を「ちゃん付け」したらアウトという話も浮上。おじさんたちは立場を失わないためにも、慎重に異性へ接するのがデフォルトとなった。しかし、あくまでこれは昼の世界の話。夜のお店に来ると「さっきまでの紳士っぷりはどこへやら?」とツッコミたくなるくらい、キャストにベタベタ触りまくるおじさんが絶対に現れる。なぜでしょうね...?手や肩くらいならまだしも、胸やお尻、あるいはそれ以上の箇所に手を伸ばすなど、非常識極まりないうつけ者にはキャストも黒服も大激怒。「そんなに触りたいなら、その手のお店に行ってくれ」が働き手の本音だ。お触りが酷い人はどんなにお金を遣っても、好かれることはまずない。最悪の場合は出禁まっしぐらなので、酔った勢いで胸タッチやスカートめくりなど、小学生男子以下の行動は絶対に控えるべきである。「○○ちゃんを指名した」←「だから何?」なおじさん歓楽街での人気者を指名するのが趣味な名物おじさんは、どこの店にも必ずいる。たいてい名物おじさんは太客で有名キャストのSNSに登場し、フットワークが軽い。飲み屋通いが趣味でキレイに飲めるタイプであれば、多くの女性から好かれているはずだ。ただ、なかには人気者を指名したという事実だけがほしい、謎のステイタスでいきがるおじさんがいる。基本的にミーハーで有名キャストを片っ端から指名、継続して通うわけでもなく「1回ポッキリ」なのに、「自分は○○ちゃんも、○○ちゃんにも会ったから」とよくわからない自慢を繰り返す。なぜでしょうね...?しかも、たった1回シャンパンを入れただけで、彼らは武勇伝のように語りまくるのが特徴だ。自慢話を繰り広げる場では全然お金を遣う素振りがないのに「六本木ではアルマンドを入れた」などと本当かウソかもアヤしいエピソードを聞かされたら、キャストは一気に疲れ果ててしまう。女性からすると他店で高額を落とそうが、有名キャストと会っていようが「今、目の前で起きていることが全て」だ。つまり、その場で何もしてくれないなら、自慢話おじさんなど他人以上の他人。この手の人は持ち上げないと不機嫌になるし、話を聞くのも面倒なため高確率で嫌われてしまうのである。LINE連投&嫉妬オンパレードなおじさん実は、飲み屋にハマるおじさんもなかなかのメンヘラ気質という場合がある。自分だけを見てほしい欲求が強いとキャストに対し重々しい言動をちらつかせる。女性にガチ恋中なのか、ただのかまってちゃんか。あるいは、どこにも居場所がないのかはわからないけれど、彼らは心の中に深い闇を持つことに間違いはない。寂しい気持ちを1箇所にぶつければキャストを束縛し、嫉妬深い彼氏以上にめんどくさく大変身してしまうのだ。キャストなど忙しくてナンボだが、メンヘラおじさんは指名卓が被っていたり、LINEの返信が少し遅いだけで怒るor悲しむ。「おーい」の一言で追撃やスタンプ連投で様子見などを繰り返し、見事なまでに女性から嫌われるのが一連の流れと言えよう。友達や家族にでさえしつこくされたら腹が立つのに、お客さん+年上に攻撃されるとキャストの精神ストレスが大きい。しかも、メンヘラおじさんはただ嫌われるだけではなく、拗らせるとさらに厄介極まりない存在である。今回紹介したのはほんの一部で、他にも「店の外で会いたがるおじさん」や「ディスり=笑いが取れると勘違いするおじさん」、「やたら容姿のジャッジに厳しいおじさん」など挙げたらキリがない。どれも常識を逸脱した行為で、店のルールはまるで無視。結局のところ、誰かに迷惑をかけないと遊べない人が好かれることはまずないのだ。いくら大金を落としても、超えてはならないラインがある。お酒を飲んだら無礼講の時代は終わったのだから、飲み屋でも古い概念のままでいると「老害」待ったなし。せっかくお金を使うなら、大人として恥ずかしくないような振る舞いを心がけてほしい。【プロフィール】たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。
記事に戻る