2026年は60年にいちどの丙午(ひのえうま)。丙午生まれの女性は「気性が荒く、夫を不孝にする」といった荒唐無稽な迷信と差別があり、前回1966年(昭和41年)の「昭和の丙午」には出生数が前年より46万人、25%も落ちこむ「丙午ショック」が起きた。では、今回の「令和の丙午」をめぐる専門家の予想はどうか。「丙午の女の赤ちゃんを生んだらたいへん」と女性誌丙午の迷信は、江戸時代の大火と「八百屋お七」の物語などをもとに広がった。国立社会保障・人口問題研究所長の林玲子さんは、昭和の丙午ショックについて「『この現代でそのような迷信を信じる人はいないだろう』というのは1966年の時の言説であったが、それは見事に外れた」と研究報告書の中でふりかえっている。昭和には「メディアによる過剰なあおり」があったとされる。吉川徹・大阪大学大学院教授の著書『ひのえうま江戸から令和の迷信と日本社会』(2025年、光文社新書)などによると、テレビ、新聞、雑誌が前年から盛んに報道。多くは迷信を否定する立場からだったが、「丙午の女の赤ちゃんを生んだらたいへん」との見出しで特集記事を組んだ女性誌もあった。若干の出産数減「可能性は否定できない」の調査報告林さんは「20%の学生が丙午を気にしている」という過去の調査結果にも言及。北海道の名寄市立大学で2017年度の1~3年生を対象に意識調査が行われた。2026年に30歳前後になる世代であり、回答した84人のうち迷信を知っていたのは約4割だった。「20%弱の学生は気にしており、女性は半数がパートナーや親など周囲に影響を受けると回答」したことなどから、2026年に「若干の出産数減が起こる可能性は否定できない」と当時の調査報告は予想していた。2025年12月には、株式会社ベビーカレンダーが妊娠・育児中の20~40代の女性935人にインターネットでアンケートをしている。最も多かった回答は「迷信は気にせず、自分たちの計画やタイミングを優先したい(優先した)」の76.2%。さらに「メリットも考えられるので、あえて選びたい(選んだ)」の5.2%を合わせると、8割が丙午の出産を避けない判断を示した。駆け込み出産が昨年は見られなかったその一方で「迷信が気になるので、避けたい(避けた)」という回答も6.5%あった。また、家族や周囲から「丙午の出産は避けた方がいい」などの言葉をかけられた経験について、12.4%にあたる116人が「ある」と答えたという。こうした状況をふまえて、人口問題にくわしいシンクタンク日本総合研究所調査部の藤波匠・主席研究員は「丙午ショックが再現される可能性は低い」と分析している。その理由はまず、親になる世代の年齢の違いだ。昭和には平均25~26歳と若く、出産を待つ余地があった。だが今回は平均30歳前後であり、「迷信のため1年先送りするような」余裕がなく、産み控えをする人は少ないと藤波氏はみる。さらに、昭和に起きた前年の「駆け込み出産」が2025年に見られなかったことも、ショックの再来を否定する予想の根拠になるという。丙午の年こそ、迷信ではなく現実の課題に向き合う必要がある。若い世代が安心して将来を描けるよう、経済不安の解消など社会の基盤整備が問われている。(ジャーナリスト 橋本聡)
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