外食各社がとんかつ市場に注目している。食べ放題で人気の「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーションは2025年2月、愛知県豊橋市に新業態「熟成肉とんかつ ロース堂」1号店を開業した。串カツ田中ホールディングス(HD)も同年5月、東京・五反田に「厚切りとんかつ厚とん」1号店をオープンし、とんかつ業態への本格参入を果たしている。また、松屋フーズホールディングス(HD)が展開する「松のや」は、2020年の200店舗から2025年には500店舗へと拡大した(「松屋」などとの併設店含む)。牛丼チェーン、焼肉チェーンなど異業態からの参入が相次ぐとんかつ市場で、いま何が起きているのか。松のや500店舗達成 併設モデルで急拡大5年間で店舗数が2.5倍に増加という「松のや」の成長を支えたのが、牛丼業態「松屋」との併設店モデルだ。1つの店舗で牛丼ととんかつの両方を提供することで、ファミリー層やグループ客の多様なニーズに応えている。「厚切りとんかつ厚とん」を始めた串カツ田中HDはは、すでに2024年8月から和牛とんかつ業態「天のめし」を京都で展開しており、複数のとんかつ業態を同時に育成する戦略を採っている。そして、物語コーポレーションもとんかつ市場へ本格参入した。新宿さぼてん100店超 海外で広がる日本の味すでに、とんかつ業態の海外展開は進んでいる。グリーンハウスフーズは「とんかつ新宿さぼてん」を海外10地域で100店舗以上展開しており、日本のとんかつチェーンとして最大規模の海外展開を実現している。「サンマルクカフェ」を運営するサンマルクホールディングス傘下の「京都勝牛」は2025年11月、オーストラリア・シドニーに「牛カツ京都勝牛」をオープンし、海外展開を9カ国・地域に拡大した。韓国、台湾、香港、タイ、カナダ、インドネシア、フィリピン、シンガポールに続く進出で、オープン前には100人以上の行列ができるなど現地で高い注目を集めた。串カツ田中HDも2025年1月に米国子会社「TI.LA.」を設立し(資本金30万ドル)、2026年中に米国にとんかつ店を出店することを計画している。同社が国内で展開する「天のめし」は主要顧客がインバウンド客となっており、海外市場での成功モデルとして活用する方針だ。インバウンドと円安が後押しとんかつ市場の活性化には複数の要因がある。第一に、インバウンド需要の拡大だ。天のめしのようにインバウンド客が多い店舗も登場しており、訪日客の増加が市場全体を押し上げている。第二に、円安の影響だ。日本国内では高単価に見えるとんかつも、海外通貨建てで見れば割安感があり、海外展開の追い風となっている。串カツ田中HDや京都勝牛が積極的に海外出店を進める背景には、こうした為替環境も影響している。インバウンド需要の取り込みと現地出店の両面で、とんかつは日本食の新たな輸出戦略の柱として位置づけられつつある。1つの店舗で2つの業態 効率化の鍵松のやが採用する併設店モデルは、外食チェーンの効率化戦略としても注目されている。松屋と松のやを1つの店舗で提供することで、面積が大きい物件にも出店可能となり、家族連れやグループ客の多様なニーズに応えることが可能になる。併設店では調理設備や人件費を共有できるため、単独店と比較してコスト削減効果も見込める。松屋フーズHDは今後もこのモデルを拡大する方針で、とんかつ市場における同社のプレゼンス強化につながると見られる。今後は各社の差別化戦略――具体的には高級路線、低価格路線、併設店、専門店などがどのように消費者に受け入れられるかが焦点となる。とんかつ市場の熱は当面続きそうだ。
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