朝日放送テレビ「探偵!ナイトスクープ」は2026年1月23日の回で、6人兄妹の世話をしている小学6年生の長男から「長男を代わってほしい」という依頼内容を放送した。
インターネット上では、依頼主の長男は「ヤングケアラーなのでは」と物議となり、25日には、同局が異例の「声明」を出す事態となった。
「正直、長男やるの疲れました」
依頼主は、広島県に住む小学6年生で、6人兄妹の長男。その下に10歳、8歳、5歳、2歳、0歳の弟や妹がいる。両親は共働きで、母親が社長、父親は母の手伝いをしているという。家事は父親とこの小学6年生が担当。親が仕事の時は、僕が弟や妹の世話をしているという。
そして、自身の状況を次のように説明した。
「ご飯の準備、洗濯物の片付け、おむつ替え。やることはいっぱい。他の兄弟も手伝って欲しいけど、しつこく言わないと聞いてくれないし、同級生は自由に遊んでいてうらやましい」
「正直、長男をやるのに疲れました」
探偵への依頼として、「生まれてから長男しかやったことがないので、1日だけでもいいので次男になりたい。僕の代わりに、長男やってくれませんか」とお願いした。
実際に、お笑いコンビ「霜降り明星」のせいやさんが、依頼者の長男の元を訪ね、おむつ替えや昼食作り、弟や妹の世話、掃除などを手伝った。次から次に押し寄せる家事に疲れた表情を浮かべながら依頼に応えていった。
せいやさんに、友達と遊べているかを聞かれた長男が「全然。週1回とか2回」と答えた。友達としたいことについては「みんなで集まってパーティーみたいな。お泊り会とか」と話していた。また、弟の世話を巡り、母親と激しいケンカになり、過去に家出したことも明かした。
せいやさんが「長男を代わってほしい」との依頼を果たすと、長男は「楽できた」と喜んだ。1日にわたり長男の大変さを知ったせいやさんは長男を抱きしめて「お前はまだ小学生や。まだ大人になんなよ」と背中を叩き、激励した。
VTRの最後には、父親からせいやさんに「またお願いします」と声が掛けられる一幕や、家族とお別れの挨拶をしたせいやさんが扉を閉める場面では、母親が長男に「米炊いて、7合!」と、家の外まで漏れ聞こえた母親の声で締めくくられていた。
「まじでヤングケアラーやん」
放送されるとネット上では、両親に対する批判の声などが上がった。
「初めて見たらまじでヤングケアラーやん。可哀想すぎる」
「探偵ナイトスクープ辛すぎる。12歳の長男に下の子5人の世話全部やらせてる親はなんなん。お兄ちゃんの顔が疲れ切ってて、産後うつのお母さんみたいな表情やった。12歳に乳児の世話させるって異常」
「育ち方は多様でいいけど、子どもには子どもでいられる時間が絶対に必要」
このような声を受けて、母親は自身のインスタグラムに次のように反論した。
「我が家、ヤングケアラーとやらではないので!!!ワンチーム、助け合い!ぽんぽん産んで悪かったな!笑」
ネット上での炎上には「全く知らん人がさ、匿名だからって、あることないこと、好き勝手かいてさ、まじでこんな世界なのが悲しい」とつづった。
「誹謗中傷が広がっている状況を重く受け止め」
同番組を制作した朝日放送テレビは1月25日、SNS上での広がる取材対象者や家族への誹謗中傷に対し、「重く受け止める」との声明を公式ウェブサイトで公表した。
「取材対象者やご家族に対して、SNS等で強い批判や誹謗中傷が広がっている状況を重く受け止めています。取材対象者やご家族への誹謗中傷、詮索や接触は厳にお止めいただくようお願い申し上げます」
そして、「ヤングケアラーは重要な社会的課題として強く認識しております。一方、家族の事情や日常のあり方は多様であると考えています」との見解を示した。番組で取り上げた家族については、
「このご家族では父親が家事・育児を担当されており、長男がそれを手伝っておられます」
とした。
番組制作に対しては、「取材趣旨の説明と同意確認を行い、関係者の尊厳・プライバシーに配慮して編集・放送しました」というが「結果として取材対象者個人に対する強い批判や誹謗中傷が広がっている状況を重く受け止めています」と繰り返した。
そして「今後も取材対象者をはじめ、番組に関わる皆様の安全と尊厳を守ることを第一に番組作りを続けてまいります」とつづっている。
この事態を受けて、TVerでの見逃し配信は停止となり、「配信中のエピソードはありません」との表記に切り替わった。
ヤングケアラーは、大人に代わって家族の世話や家事を担う子ども・若者のことを指す。一般に多いのは、食事の準備や掃除、洗濯といった家事、見守り、きょうだいの世話、目の離せない家族の励ましなどの感情面のサポートなどとされている。ヤングケアラーになると、子ども自身がやりたいことができないなど、学業や友人関係などに影響が出てしまうこともある。
厚生労働省が2020年度、21年度に調査した実態調査では、今回の依頼者と同じ小学6年生で世話をしている家族が「いる」と回答したのは6.5%。そのうち、世話をしている児童に頻度を尋ねたところ、小学6年生では半数以上が「ほぼ毎日」世話をしていると答えていた。