2026年2月8日に投開票された衆議院総選挙で、自民党は結党以来最大の316議席を獲得した。高市人気で大勝した自民党は米国の共和党がトランプ私党になったように「早苗党」になるのか?自民党を40年余り見続けてきた選挙・政治アドバイザーの久米晃氏(元自民党事務局長)に聞いた。(聞き手ジャーナリスト菅沼栄一郎)「中道」の失敗が高市人気を助けた――選挙戦終盤、トランプ大統領が高市首相へ「完全かつ全面的に支持する」と表明しました。3月には国賓待遇で、高市首相を米国へ招待するそうです。「トランプ大統領は、相手に先制パンチをくらわし、相手がたじろいだら交渉する、という手法をとっています。日本には、パンチを繰り出さなくても、最初から軍門に下っています。トランプ大統領にとって、日本は非常に組みしやすい相手、戦後レジームからの脱却など遠い夢です」――高市さんは、まさかこんなに勝てるとは思っていなかった、本人が一番戸惑っているんじゃないですか。「急な解散で、多くの人はええっ?と思った。高かった高市内閣の世論調査支持率は、その後は落ちていき、このまま落ちていくんじゃないか、というのが大方の読みでしたが落ちませんでした。一方で、立憲民主党が公明党と組んで(新党「中道改革連合」結成)、明らかにマイナスになった。自民党の(左の)対極にあった立憲が、自民党と連立を組んでいた公明党とくっついて、『中道』という名前にした。真ん中に寄って来て、国民民主や参政党や維新と、同じレベルになってしまった。立憲の責任は重いと思います。消費税減税にしたって、ほとんどみな同じようなことを言った。争点はなくなった。高市さんが言った『私か野田(佳彦・中道改革連合共同代表)さんか』そういう選択になった。政策的な争点が、ほとんどなくなった。公明党を過大評価しすぎました。公明党支持者は、組織の指示に従順と言われてきましたが、前回選挙では公明党支持者の自民党候補への投票は6割程度と言われています。今回も、急な路線変更に納得できない支持者も多数いたのではないでしょうか。これが高市さんを助けた。公明党はとんでもない読み違えをして、与党にも野党にもなれなくなってしまった。共産党のように孤立してしまった。『希望の党』に似ています」「高市さんは、思想的には安倍さん、性格的には石破さんに似ている」――1986年には、中曽根康弘首相の「死んだふり解散」で衆参同時選挙となり、自民党は300議席(前回比50増)と圧勝、中曽根総裁はボーナスで任期1年延長となりました。高市さんにもボーナスはつきますかね?「当面の間は、高市さんに文句を言う人はいなくなります。小泉純一郎首相の郵政解散(2005年296議席)や安倍晋三首相の抜き打ち解散(2014年、291議席など)の時も、そうだった。違うのは、中曽根さんも小泉さんも、安倍さんの時だって、チームがあった。ところが高市さん、チームがないんです。では、『チーム高市』が作れるかどうかですが、それ以前に経済界が『積極財政』の先行きを、めちゃくちゃ心配しています」――「チーム高市」候補としては、だれかいるんですか?「党首討論会をドタキャンした高市首相の、手の治療による欠席を判断したとされるのが木原稔官房長官。スパイ防止法とか、旧姓使用拡大法案とか、やりたいことをいろいろ抱えているんだろうけれど、高市さんは『ぼっち』だから。段取りを仕切ってくれる人は、いないかな。高市さんと直に話せない人たちが、木原さんの周りに集まってくるんじゃないですか。高市さんは思想的な部分は安倍さんに憧れ、性格的には石破さんに似ていますかね。人づき合いは苦手で読書好き」――自民党内の人間関係、どうなっていくんでしょうか?この選挙で、少しでも負けたら、高市さんを引きずりおろしてやろうと思ってた人も、少なからずいたはずですが。「むかしは、小泉チルドレンも安倍チルドレンもけっこういましたけどね、高市チルドレンはいましたかね?新潟の高鳥修一さん、東京の松島みどりさんぐらいですか。高市さんの支持率が落ちてくると、自ずと自民内で別の集まりとか、党外では反自民の動きが活発になります。麻生さん(太郎=副総裁)なんかは派閥を拡大しているとか聞きました。2026年の後半ころに、内閣支持率が落ち始めたら、これで27年の統一地方選挙が戦えるのか、その後の参議院選挙戦えるのか、そういう不満が出てくる可能性がある」取り巻きがいないところがトランプ大統領と違う――米国では「独裁」トランプの支持率が落ちていますね。「もちろん、大統領権限のようなものは、日本の総理にはありません。独裁的といえば、高市さんは、そんなふるまいをするかも知れませんが、取り巻きがいないというところが、トランプ氏との決定的な違いじゃないですか。期待値が大きいだけ、失敗した時の反動は大きいと思います。まずは景気です、言ったことの結果が出なかったら、信用はすぐに失墜します。働いて働いた結果、会期末までに結果が出ないんじゃないか、という不安感が、早期解散になった、という気がします」