全国でバックカントリーのスキーなどを楽しむ人たちによる遭難が多発し、特に外国人のケースが目立っている。
スキー場の管理区域外になるため、長野県警の山岳遭難救助隊では、「バックカントリーはスキー場の延長ではありません!」と公式Xで注意喚起し、「安易な気持ちでバックカントリーエリアに入らないように」と呼びかけた。どんな実態があるのか、同隊に詳しく話を聞いた。
「トラブルがあっても、すぐに救助が来るとは限りません」
雪山のパウダーを存分に楽しんでいて、目の前の滝に気づかずそのまま転落、いきなり雪崩が襲ってきて仲間の前で姿を消し...。
長野県内では2026年1月に入って、バックカントリー遭難による死者が2人に上った。いずれも外国人で、アメリカ人男性とロシア人男性が帰らぬ人になった。
長野県警サイトの山岳情報などによると、1月は、バックカントリー遭難が9件あった。遭難した12人のうち、実に10人が外国人だった。
2月に入っても、遭難は止まらず、9日までに4件発生している。
こうした事態を受け、県警の山岳遭難救助隊は同日、過去の救助活動の写真を投稿し、スキーヤーらに注意を呼びかけた。バックカントリーは、スキー場の管理区域外になることから、「冬山そのもの」だとして、「トラブルがあっても、すぐに救助が来るとは限りません」と自覚を促した。
翌10日には、バックカントリー遭難しないための注意事項を投稿し、「スキー場が指定するゲートやアクセスポイントから入山(規制ロープをくぐらない)」「登山計画書の提出」「アバランチギアやビバーク装備等を携行」などを挙げた。
実際の遭難では、こうした点について、どんな状況になっているのだろうか。
山岳遭難救助隊の隊長は10日、J-CASTニュースの取材に対し、バックカントリーが盛んな白馬や野沢温泉などのスキー場では、ゲレンデ上部に「ここから出て下さい」などとゲートなどが設置されていることが多いとした。遭難者がこうしたゲートなどを利用しているかについては、こう答えた。
民間に救助要請すれば、計50万円ぐらいになることも
「1月からの遭難のケースでは、半分ぐらいがゲートなどを利用していました。残りの半分は、規制ロープやスキー場の境界線を越えて、管理区域外に出ていましたね。スキー場としては、好きなところからバックカントリーに出ると困るので、出ることが多い場所にゲートなどを設置してあります。しかし、ゲートなどから出たとしても、遭難のリスクが低くなるわけではありません」
登山計画書については、スキーなどのための登山については、罰則はないものの、県の条例で提出が義務付けられている。しかし、スキー場からバックカントリーに出る場合は、ローカルルールの位置づけになっていることが多いという。義務付けられていることもあるが、そうでない場合も、スキー場が登山計画書を入れるポストを用意していることが多いという。遭難者については、計画書を出したかの裏付けは取れていないものの、出す人もいるとした。
雪崩に備えたビーコンやショベルなどの冬山装備をしていたかについては、こう話した。
「遭難者の半分ぐらいは備えていましたが、中には、ゲレンデの延長感覚でいた人もいました。その日に救助できないとビバークになりますが、冬山では簡易テントがないと厳しいですね。装備をちゃんとしていても、山奥の急なところはハイリスクですので、雪崩に襲われたり、滝に落ちたりもします」
遭難者に外国人が多い理由については、白馬や野沢温泉といったスキー場の9割がインバウンド客で占めているのが大きいとみている。日本人も遭難しているため、国籍で違いはないとした。
民間の県山岳遭難防止対策協会に救助要請した場合は、遭難者から費用を徴収しているが、負担できないと伝えられた場合は、要請しないという。
「直接電話ができない外国人の方で、SNSを通じて友人から救助を求められたときなどは、支払いを確認できませんので、要請しないことにしています。費用は、救助メンバー1人につき5、6万円かかり、数人で救助すれば、1日20~30万円ぐらいになります。遭難者を運べば、プラス10~20万円ぐらいかかり、計50万円ぐらいになることもあります。バックカントリーのリスクを意識して、7割ぐらいの方が山岳保険に入っていますね。時々支払わない人はいますが、費用は基本的に払ってもらっています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)