小学館が2026年2月27日、漫画アプリ「マンガワン」で連載していた『常人仮面』の配信を停止し、単行本の出荷を停止したことを報告した。原作者の過去の逮捕歴および性加害告発を受けての対応についても謝罪している。一連の対応を受け、「マンガワン」で連載中の漫画家らからは、批判や失望の声が相次いでいる。「『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です」問題となっているのは、『常人仮面』の原作者・一路一氏の過去の逮捕歴をめぐる小学館の対応だ。一路一氏は、かつて「山本章一」名義で小学館のウェブコミック配信サイト「マンガワン」および「裏サンデー」で配信されていた漫画『堕天作戦』の原作者をつとめていたことが判明した。『堕天作戦』は15年2月に連載を開始、20年2月ごろより休載が続き、22年10月をもって連載終了。当時のX投稿では、連載終了の理由について山本氏自ら「一身上の都合」「現在も継続中の私的なトラブルによるもの」と説明し、電子書籍で続きを発表する意向を示していた。一方で、SNS上では、「弁護士ドットコム」が26年2月20日に公開した記事「教え子に『おしおき』称する性行為、元高校講師の男性に1100万円の賠償命令 札幌地裁」などを発端に、トラブルを起こした男性が山本氏ではないか、とする情報が拡散された。さらに同時期には、真偽は不明だったものの、2月19日発売の『常人仮面』の最終巻の配信・出荷が停止されていたことで、困惑の声が浮上していた。なお、『常人仮面』は22年に連載が開始し、原作者は「一路一」名義だった。こうした中、小学館は27日、マンガワンの公式サイトに「『常人仮面』配信停止に関するご説明とお詫び」との声明を公開。「(『常人仮面』の)原作者の一路一氏は、『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です」と認めた。「本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした」声明では、「2020年に、山本氏が逮捕・略式起訴され罰金刑を受けたことを踏まえ、『堕天作戦』の連載を中止いたしました」とした上で、「しかしながら、2022年に、マンガワン編集部は、一路一名義の原作で新連載『常人仮面』を開始いたしました。本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした」と説明した。「何よりも被害に遭われた方に対し、心よりお詫び申し上げます。編集部として責任を重く受け止めております」とした上で、読者および作画担当の鶴吉繪理氏らに謝罪している。一方、SNS上では、マンガワンの編集者が山本氏と被害者との和解協議に参加していたとのではないか、とする情報も拡散されていた。声明では、この件についても、「編集部が組織として関与する意図はありませんでした」としつつ、「当事者双方からの求めに応じる形で編集者がメッセージアプリのグループに参加したことがありました」と説明している。そのうえで、「参加以前に既に当事者間で協議されていた条件があり、編集者は、当事者に対し、弁護士を委任して公正証書を作成してもらうよう助言をしております」と明かし、「当該事案の重大性に対する編集部としての認識および情報把握が十分であったとは言えず、不適切な対応でした」とした。「隠蔽したともとれる編集者の行動には強い失望」小学館による説明を受け、SNSではマンガワンで連載中の漫画家らからも、疑問や怒りの声が相次いでいる。『ワンパンマン』『モブサイコ100』などで知られる漫画家のONE氏はXに、「マンガワン。未成年者への性加害を激しく非難する立場を明確にできない人達とは、チームを組めない。当たり前」と投稿。「関連当事者による事情公開を待つ。小学館にも、もし彼らがその行動を取るなら支持してもらいたい」とした。マンガワンで『懲役339年』『劫火の教典』などを連載していた伊勢ともか氏はXで、「堕天作戦と同じ時期、同じ賞出身でマンガワンに連載していた立場からすると、今回の事件はショックであり、作家による未成年への性加害、虐待行為を隠蔽したともとれる編集者の行動には強い失望を覚えます」とした。さらに、「僕自身も、昨日まではマンガワンで連載していた事を誇りに思っておりました。ですが今はそれを恥ずかしく思う気持ちです」とつづり、「編集部には今後の責任を持った対応と、この様な事態が二度と起こらないようにするための体制の改善を強く望みます」と訴えた。『植物病理学は明日の君を願う』を連載中の竹良実氏はXで、「『植物病理学は明日の君を願う』のマンガワンでの更新を当面の間中止することにしました」とXで発表。「この作品を愛してくださる方々のご期待に今後も応えたい、けれどもマンガワンが何事もなかったように続いていくことに協力できない思いがあり、この判断に至りました」とした上で、「週刊ビッグコミックスピリッツ」での連載は続行するとした。逆木ルミヲ氏はXで、「今後小学館とのお仕事は一切お引き受けいたしません」とつづる。「作画の先生は何も悪くないけどご本人の中で『わたしは関係なかった』と切り離すのは相当きつい作業でしょ」と、作画担当の胸中をおもんぱかった。
記事に戻る