イラン情勢の緊迫化によって原油価格の高騰が進み、多くのエネルギー資源を輸入に頼る日本は、かつてないほどの試練に直面している。
そうしたなかで日米首脳会談が行われ、日本はアラスカ産原油の増産や次世代原子炉分野など、アメリカのエネルギー分野に対し、最大11兆円規模という桁違いの投資を行う方針を確認した。
世界的危機をしたたかに利用する中国
こうした状況下のエネルギー安全保障にとって脅威となるのが、中国の存在だ。
日本の足元で起きている問題を直視する前に、まずは中国が現在の世界的危機をいかにしたたかに利用しているかを確認しておきたい。
中国は、「影の船団」と呼ばれる偽装タンカー群を駆使し、アメリカの制裁網を無視してイランから底値で原油を大量に買い付けていると指摘されてきた。
制裁下で買い手の乏しいイラン産原油を安く買い叩くことで、中国は自国のエネルギーコストを抑え込み、経済的優位性を密かに高めているというのである。
さらに、アメリカの関心がイラン対応やイスラエル防衛に向いているなか、日本にとって大きな懸念となるのが東シナ海のガス田問題だ。
ガス田の共同開発で合意したはずが
日本のEEZ(排他的経済水域)と中国のEEZが重なる東シナ海には、日本が主張する「日中中間線」のすぐ西側(中国側)に、天然ガスや石油を産出するガス田が存在する。
中国は、「白樺(中国名・春暁)」をはじめとするガス田の採掘プラットフォームを次々と建設してきた。
もともと日中両国は対立を避けるため、2008年に東シナ海を「平和・協力・友好の海」と位置づけ、ガス田の共同開発で合意した。日本側も出資し、利益を分かち合うはずだったが、この合意は事実上、中国によって反故にされ続けている。
中国は共同開発に向けた具体的交渉を先延ばしにする一方、単独でのプラットフォーム建設を強行し、中間線の中国側には多数の構造物が立ち並んでいる。
とりわけ問題なのは、海底のガス田が中間線で都合よく分断されているわけではないという点だ。
地下の地層はつながっている。中国が中間線ぎりぎりの自国側でガスをくみ上げれば、圧力の変化によって日本側(中間線の東側)に埋蔵されている天然ガスまでが、地中で中国側へ吸い寄せられてしまう。
これが、いわゆる「ストロー効果」である。
日本政府は長年、この一方的な開発に対して「極めて遺憾である」と抗議を繰り返してきた。
しかし中国側は、
「自国の管轄海域における正当な開発だ」
として取り合わない。
日本が抗議の言葉を並べている間にも、日本の国益となるはずだった天然ガスは、24時間365日、ストローで吸い取られるように中国へ流れ続けている。これはもはや、外交問題という次元を超えた「物理的な資源の収奪」にほかならない。
中国に対するアメリカの対応で状況は変わるのか
高市首相は今回の日米首脳会談において、トランプ大統領が近く習近平国家主席と会談する予定だったことから、こうした対中政策についても重要な論点としたかった。
というのも、この会談によってトランプ政権が中国との関係を深め、東アジアへの関心を薄めることを懸念していたからである。
中東情勢の影響で米中首脳会談は延期される状況となっている。高市首相はトランプ大統領から「日本の良いところを伝えようと思う」という言葉を引き出したものの、根本的な解決に向かうかどうかは不透明だ。
日本のエネルギー安全保障をめぐっては、なお多くの課題について考えていかなければならない。