電車の車内トラブルは、混雑時に起きやすいといわれる。国土交通省が2025年7月に公表した「都市鉄道の混雑率調査」によると、首都圏の主要路線では朝の通勤時間帯に150%を超える混雑率となる区間もあり、車内で身動きが取りづらい状態が日常的に発生している。鈴木里奈さん(仮名・30代)が経験した出来事も、満員電車の中で起きた。満員電車でカバンが当たってしまい...ある年の初夏、都心にある職場から帰宅するため、いつもの時間に電車に乗っていたという。「帰宅ラッシュと重なっていて、車内は『ぎゅうぎゅう』でした」車両の中ほどまで押し込まれ、吊り革にもつかまれない状態だった。鈴木さんは足を踏ん張り、揺れに耐えながら立っていた。しかし、大きな揺れが起こった瞬間、体勢を崩してしまったそうだ。両手で抱えていたカバンが、前に立っていた男性の背中に当たってしまったのだ。「すぐに体勢を戻しましたが、電車が揺れるたびに少し触れてしまうことがあったんです」すると、徐々に男性の様子が変わってきたようだ。始めは背中で軽く押し返すような動きをしていたのだが、次第に強く押し返してくるようになったという。「だんだん背中を突き出す感じになって、わざと当てているように感じました」鈴木さんはなるべく距離を取ろうとしたが、混雑のため身動きが取れなかった。そして、電車が大きく揺れたとき、再びカバンが当たってしまった。そのときだった――。「ぶつかってくるな!!」男性は突然、大きな声で怒鳴ったという。「次当たったら、ただじゃおかないぞ!」車内に響く声に、周囲の乗客の視線が集まってしまった。「一緒に降りましょう」と言い、事情説明することに普段ならそのまま黙っていたかもしれない......。しかし、その日は仕事のストレスもあり、鈴木さんは男性に声をかけた。「それなら、次の駅で降りて駅員さんに話しましょうか」男性の腕をつかんだ。すると男性は再び、大きな声をあげたのだ。「チカン!チカン!」鈴木さんは「突然そう言われて、思わず手を離してしまいました」と振り返る。それでも鈴木さんは、駅員に事情を説明しようと考え、男性の動きを見ていた。男性は次の駅で降り、すぐに後を追ったという。ホームから階段を駆け上がる男性を追いかけると、男性は周囲に聞こえる声で叫び続けていた。「チカンだ!」鈴木さんは改札付近で男性に近づき、それから駅員に事情を説明。その後、警察官が到着し、話を聞かれることになった。「はじめは、私が被害者だと思われていたみたいです」鈴木さんが経緯を説明すると、警察官は状況を理解した様子だった。男性には厳重注意が行われたそうだ。駅員の配慮で、男性とは別々の場所で事情を聞かれていた。鈴木さんによると、男性は警察官に対して「女性にも注意してほしい」と話していたという。「警察官も、どのように私に注意していいのか困っている様子でした」帰宅時には2人が鉢合わせしないよう、男性を先に駅から出し、その後に鈴木さんが帰るよう促された。この出来事をきっかけに、満員電車を避けるようになった。「また同じことが起きたらと思うと、怖いんです」鈴木さんは現在、片道12キロの道のりを自転車で通勤している。通勤時間帯の電車は混雑が激しく、乗客同士の接触が避けられない場面も多い。思わぬトラブルに発展したときには、駅員に事情を伝えるなど、落ち着いて対応することが大切だ。
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