「人生100年時代」やリスキリングへの関心の高まりとともに、50代以上の社会人が大学で学び直す機会が広がっている。その一つが「履修証明プログラム」だ。60時間以上の体系的な学習をし、修了すれば履修証明書が発行される。そのことを履歴書にも書ける。立教大総長「『私は何者なのか』という問いに取り組んでいただく」たとえば、立教大学の「立教セカンドステージ大学」は50歳以上が対象だ。「学び直し」「再チャレンジ」「異世代共学」をかかげる1年間のプログラムが人気を集めている。西原廉太総長は「蓄積してきた知識と経験をふりかえりつつ、別の視点から見つめ直し、理解し直す。最終的には『私は何者なのか』という問いに対する解に取り組んでいただく」と述べている。早稲田大学の「LifeRedesignCollege」は「人生100年時代の大学」をうたう。資格やスキルアップに直結するというより、「これからの生き方を見つめ直す学び」を大切にするという。2025年度から修了者向けの新設コースもスタートし、ゼミやワークショップなどを通じて学び続けられる環境を整えている。東京都立大学「プレミアム・カレッジ」では文系科目のほか、世界自然遺産に登録されている小笠原の自然保全といった自然科学も学べる。環状7号線の下の巨大な地下調節池の視察や、東京の島の自然を学ぶ合宿など、フィールドワークも充実している。調査では「70%以上が、何歳になっても学ぶ」こうした履修証明プログラムのしくみは2007年の学校教育法改正で創設された。文部科学省によると、2022年度実績で全国781大学のうち207大学(27%)がプログラムを開設しており、9314人が受講した。大学や受講者の増加で「着実に進展している」としている。どの大学がどんなプログラムを設けているかは、文科省の社会人向け学習ポータルサイト「マナパス」で調べられる。学び直しの意欲の高まりは各種調査にもあらわれている。パーソル総合研究所の「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」によると、対象者9000人のうち、70.1%が「何歳になっても学び続ける必要がある時代だ」と考え、63%が「学び直しは将来のキャリアに役立つと思う」と回答した。しかし、実際に学び直しをしているのは14.4%にとどまっていた。東大名誉教授「生涯に複数のキャリアを持つ人生が可能」意欲と行動のギャップは日本の課題となっている。時間がない、お金がかかるなど、その理由はさまざまだろう。「社会人が大学で学び直すことは、他の先進国と比べてまだハードルが高い」と指摘するのは、老年学の第一人者として知られる秋山弘子・東京大学名誉教授だ。「100年あれば、生涯に複数のキャリアを持つ二毛作・三毛作の人生も可能」といい、長寿社会に対応する社会基盤づくりを提唱している。学び続けることは心身の健康にも役立つ。2026年2月、英紙ガーディアンは「読書・執筆・語学学習などの知的活動を続ける人は、認知症リスクが最大約40%低下する可能性がある」との研究報告を報じた。アメリカの研究チームが平均80歳の約2000人を8年間追跡した結果だという。コロナ禍後、通信教育やオンライン学習の選択肢も広がってきた。大学に通うのもよし、地域の講座やオンライン学習を利用するのもよし。なにより、新しい挑戦は人生に活力をふきこむ。「人生100年時代」のチャレンジは、その一歩を踏み出すかどうかの選択かもしれない。(ジャーナリスト 橋本聡)
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