老舗として知られる札幌市内の水産業者が、店で従業員に食材を無理に食べさせる様子を撮った動画をSNS上で投稿し、パワハラではないかと批判が相次ぎ、業者が動画を削除したうえで謝罪した。
「いつものスタッフ同士のじゃれあいからの流れ」だったとこの業者は説明したが、なぜこんなことをしたのだろうか。この業者に取材して話を聞いた。
「いつものスタッフ同士のじゃれあいからの流れ」
業者のロゴが入った帽子を被り、青い手袋をした女性が、同じ帽子を被った男性の口に青っぽい食材を押し込んでいる。背後には、作業場や売り場が見えていた。
女性は、「早く、早く」と急かすが、男性は、顔を真っ赤にして苦しそうだ。
「あっ、辛っ!」。男性は、こう声を上げるが、女性は、なおも食材を押し込む。周囲の人からは、笑い声が起き、女性は、「大丈夫、行ける」と譲らない。「おいしいよう」とはやし立て、男性が口から食材を出そうとすると、周囲から「汚ねえ」と声が上がった。女性も、「汚いよ」「本当ヤダ~」とあきれ、男性が吐き出すと後ろに逃げていた。
この動画は、業者の吉本水産が2026年5月に入って、スレッズ上で投稿した。
しかし、7日になって、「パワハラではないのか?」などとX上で取り上げられ、動画が拡散して炎上状態になった。「仲の良さを見せたいのかな」との指摘もあったが、「本当に不快です」「食べ物で遊ぶのは良くない」といった批判が多かった。作業場や売り場が映っていたため、動画のような行為は不衛生だとの指摘も出ていた。
その後、動画は削除され、吉本水産は同日、謝罪文をスレッズ上に投稿した。
そこでは、商品を紹介して食べる動画を投稿し続けているが、今回は「いつものスタッフ同士のじゃれあいからの流れの動画になってしまいました」と釈明した。2回に分けて投稿した動画の2本目だという。そのうえで、「パワハラ、健康に関わる行き過ぎた行動、食べ物を粗末にする行為、不衛生さ等皆様のご指摘通りでございます。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪し、「これからはこの様なことの起きない様再発防止に努めて参ります」と説明した。
「上司ではなく同僚で、いじられたのを反撃した」
動画の行為は、パワハラに当たるものだったのだろうか。
この点について、吉本水産のスタッフは5月8日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように答えた。
「女性はパートで、男性は社員になります。女性は、上司ではなく同僚です。1本目の動画では、男性が女性をいじっていて、2本目では、女性が『何を言って言ってるのか』と反撃に出ています。男性もノリノリで、本人の体質で顔が赤くなっているのだと思います。お酒は飲んでいません。毎回このような動画を投稿していました。しかし、パワハラに見えますので、今後は止めようと話し合っています」
動画は、5日早朝の営業前に店内で撮られたといい、ゴールデンウィーク中に焼き肉を食べる企画だったと説明した。男性の口に押し込まれたのは、焼き肉に巻くサンチェだったという。動画の後に、すべて店で食べたとしている。
動画の行為について、食品衛生面に問題はなかったのだろうか。
札幌市保健所の衛生担当課は8日、取材に対し、動画の内容は「食品衛生上ふさわしくない」とする匿名の通報が同日にあり、店長に電話で聞き取りをしたと明らかにした。
「動画を撮影した後、手袋は外して廃棄したとのことです。次の作業では手袋を交換しており、陳列の商品に唾液が飛んだりしていないとも話していました。厨房を出て手袋を着けた女性がおり、売り場に近いところだったのが気になりました。店が入居するスーパーには、定期的に立ち入り検査をしており、その機会に食品衛生上の対応をしたいと考えています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)