電車内では、泥酔客による迷惑行為やトラブルがたびたび話題になる。日本民営鉄道協会が発表した2025年度の「駅と電車内の迷惑行為ランキング」では、「酔っ払った状態での乗車」が10位にランクインした。多くの利用者が車内での泥酔客に、ストレスや不安を感じていることがうかがえる。都内在住の中田賢太郎さん(仮名・40代)は、東京メトロの車内で忘れられない出来事に遭遇した。床に倒れた泥酔客「正直、恥ずかしいと思った」出勤のため東京メトロに乗り込んだ中田さんは、向かいの席に座る男性へ目を向けた。「明らかに、泥酔していました」その男性は口を半開きにし、いびきをかきながら眠っていたという。電車が揺れるたびに体が傾き、座席からずり落ちそうになっていた。そして、次の瞬間だった。男性の体が滑り、そのまま床へ転倒した。「結構な勢いで落ちたんですが、まったく起きませんでした。男性は床に大の字になったまま、眠り続けていたんです」次の駅でドアが開くと、海外からの観光客グループが乗ってきたそうだ。スーツケースを引いた観光客たちは、床に横たわる男性を見て何やら話をしていたという。「正直、『こんな日本人の姿を見られるなんて、恥ずかしい』と思いました」すると、そのうちのひとりの外国人男性が、迷いなく泥酔客へ近づいた。中田さんが、「何をするんだろう」と思って見ていると――。男性は「緊急停止ボタン」を押した。そのため、「ガクン」と電車が急停止したようだ。「驚きました。通勤中だったので、最初は『何てことするんだ』と思ったんです」「頭を打っているかもしれない」 外国人男性の行動に考えさせられたしかし、外国人男性は慌てる様子は見せなかった。英語とジェスチャーを交えながら、周囲へ呼びかけ始めたという。中田さんは英語が分からなかったが、泥酔客の様子を心配していることが伝わってきたそうだ。「どうやら、『倒れた時に頭を打ったかもしれない』『意識を確認したいから手伝ってほしい』と言っているようでした」中田さんは、その時になって初めて男性の意図を理解した。「私は、迷惑な酔っぱらいだと思って見ていました。でも彼は、違ったんです」外国人男性は、泥酔客の頭を慎重に支えながら、声をかけて意識の有無を確かめた。ところが、その直後――。「何すんだよ!」泥酔客が突然目を覚まし、怒鳴り始めたという。せっかく助けようとしてくれていたにもかかわらず、逆ギレしていた。一時はトラブルになりそうな雰囲気だったが、その後駅員が駆けつけ、男性は次の駅で降りることになったようだ。駅員の対応が終わると、車内には安堵した空気が流れた。すると、誰からともなく、外国人男性へ親指を立て始めた。「グッジョブ!」「ありがとう」と、声をかける乗客もいたそうだ。外国人男性も照れくさそうに笑いながら、親指を立て返したという。「国籍も言葉も関係なく、人を思いやる行動はちゃんと伝わるんだと思いました」泥酔客によるトラブルが問題視される一方で、体調不良や事故の可能性が隠れているケースもある。見た目だけで状況を決めつけず、異変を見かけた際は周囲と協力しながら冷静に対応することも大切だ。
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