デビュー15周年を迎えた澤野弘之。
劇伴作家として、SawanoHiroyuki[nZk] ではアーティストとして、ドラマティックなサウンドでロマンティシズムとグルーヴ感を追求し続ける

ルーツはJ-POPと劇伴音楽

   ――劇伴作家デビュー15周年、そしてベストアルバム『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』(2020年4月発売)が完成しての感慨はどんなものがありますか。

   15周年というのをそこまで意識していたわけではないんですけれど、それでもこうした機会でベストアルバムを出してもらえることになって。楽曲を振り返ると、いろいろな作品に携わってきたからこそ、今の自分の音楽活動があるんだなというのをあらためて感じます。

   ――澤野さんの活動のスタイルはとてもユニークですよね。劇伴(映画やドラマ、アニメなどの劇中音楽)作家としての音楽制作と、ボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk] としてのアーティスト活動を両立している。こういう活動の仕方に至った最初のきっかけはどういうところにあったんでしょうか。

   もともと自分自身、CHAGE and ASKAのASKAさんや小室哲哉さんに憧れて音楽を始めるようになったので、歌詞のある楽曲(ボーカル曲)を作ること、それをパフォーマンスすることには強い興味があったんですよね。その一方で劇伴音楽の魅力にもハマっていて、その二つの気持ちをずっと持ったままプロになった。なので、初期に携わったサウンドトラックでもボ-カル曲を入れるアプローチをしていました。『医龍』という作品が最初だったのですが、自分としてはボーカル曲が劇中で流れることが作品のフックになるんじゃないか、そこからサウンドトラックに興味を持ってもらえるきっかけになるんじゃないかという思いがあって。するとその曲がドラマの中でいいかたちで使われて、視聴者からも反響があった。そこからアニメ作品でもボーカル曲を入れてみるようになって。次第に劇伴音楽だけではなく、アーティストとしての活動ができたらいいな、という気持ちが強くなったと思います。


ニューアルバム『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』

   ――澤野さんの音楽のルーツには、J-POPと劇伴音楽の2つがあるということですが、劇伴音楽のルーツはどういったところにあるのでしょうか?

   最初は久石譲さんや坂本龍一さんでした。その音楽に感銘を受けて、劇伴音楽をやっていこうと思いました。その流れとして菅野よう子さんにも影響を受けて。ほかにはハンス・ジマーやダニー・エルフマンといったハリウッド映画の作曲家ですね。彼らの音楽を通してハリウッドのサウンドの作り方を自分なりに吸収するべく影響を受けた部分があります。

   ――他にも影響を受けた、自分のルーツと言えるアーティストはいらっしゃいますか。

   洋楽だと一番大きいのはエアロスミスですね。中学生でバンドを始めようと思っていたころ、知り合いがエアロスミスの『ゲット・ア・グリップ』というアルバムを貸してくれたんです。それまでもB'zをカラオケで歌っていたり、ボン・ジョヴィとかMR.BIGを聴いたりしていたんですけれど、アメリカン・ロックで一番衝撃を受けたのはエアロスミスだったと思います。その後もたとえばニッケルバックのようなアメリカン・ロックやここ最近のフォール・アウト・ボーイのようなバンドサウンドと打ち込みをうまく融合して活動している人たちにも影響を受けているところはありますね。

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