デビュー15周年を迎えた澤野弘之。
劇伴作家として、SawanoHiroyuki[nZk] ではアーティストとして、ドラマティックなサウンドでロマンティシズムとグルーヴ感を追求し続ける

ハリウッドの映画音楽から新たな刺激

   ――リスナーとしての澤野さんは普段音楽をどのように聴いていますか。

   海外のサウンドに影響を受ける部分があるので、幅広いジャンルを聴いているというよりは、そのときのトップチャートで入ってくるような曲を聴くことが多いですね。POPなサウンドが好きだったり、エアロスミスに影響を受けたというのがあるので、最近はバンドサウンドと何かが融合しているような音作りが好きで。そういうものを中心に聴いています。それ以外にも、ハリウッド映画の音楽はサウンド面で常に格好いいことをやっているので、その時に興味ある映画のサウンドトラックがどういう音で作られているのかと思って聴いたりしています。去年の後半に毎日のように聴いていたのは、ディズニー映画の『くるみ割り人形と秘密の王国』エンドソングでアンドレア・ボチェッリの「フォール・オン・ミー」という曲ですね。映画の余韻と共に聴いたから余計にそう思ったのかもしれないですけど。ピアノと歌だけで淡々と始まって、オーケストラが重なって、淡々と繰り返していたメロディが最終的にすごくエモーショナルに聴こえてくる。そこにすごく感動しちゃって、ずっと聴いていました。

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   ――ここ最近の映画音楽、ポスト・クラシカルといわれる分野はどんどん進化していますよね。より音響的な、より新しい解釈のオーケストレーションが生まれている。

   そうですね。ハンス・ジマーがあれだけの存在感を築いたのも、それまでのハリウッド映画の概念を崩したからだと思います。たとえばジョン・ウィリアムスのような人が作っていた正統派のオーケストラとは真逆のことをやった。打楽器の存在感を押し出してシンセサイザーのグルーヴとあわせて鳴らしたりした。それまでのハリウッド映画の音楽がそこから変わって、今はいろんな進化を見せている。そこには毎回いろんな作品を見て刺激を受けます。

   ――音楽を聴くときはどんなところを意識して聴くことが多いですか。

   普通に「おもしろそうだな」って聴いている音楽はみなさんと変わらないと思います。鳴っている音やメロディを単純に「好きだな」って思う感覚でしかなくて。ただ、自分なりに何かを得ようと思って耳をそばだてている時に一番意識するのは、サウンド、音色、それとリズムやグルーヴの部分ですね。横に揺れている感じだったり、裏拍が強調されていたり、そういう感覚を意識して聴いたりします。リズム以外でも、細かく鳴っているシーケンスのどこを強調するとグルーヴ感が出るかというようなところもある。それが結果的にサウンドにも影響すると思うんです。

   ――ちなみに、今、音楽活動の中でもっとやりたいこと、もしくは音楽以外で興味を持っていることはありますか?

   やっぱり映画に興味があって。それもエンターテインメントとして楽しんでるだけではなく、結局そこで流れている音楽から刺激を受けたりして、今やっていることにつながったりはしますね。音楽活動では、今やらせていただいてることをより広げていきたいというのはありますね。いろんなかたちでライブもやってみたい。たとえば去年は東京と大阪のビルボードライブで生演奏だけのコンサートをやって、そこで新しい刺激もあったので。いろんな見せ方も追求していきたいなと思います。

   ――では、最後に。澤野さんのモデルのJust earを試してみたいという方、ファンの方へのメッセージをいただければ。

   僕自身は基本的に楽曲の低音感、サウンドの広がりを重視して楽曲を作っているところがあるので、Just earを通してその部分をより鮮明に聴いてもらえればと思います。きっと、普段は聴こえなかった音、気付かなかった音にも気付くと思うので。そのあたりも楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。


【プロフィール】

澤野弘之(サワノヒロユキ)

1980年生まれ、東京都出身。作曲家、編曲家。2005年にデビュー。06年『医龍』シリーズの挿入歌で注目を集め、その後、NHK連続テレビ小説『まれ』、アニメ『アルドノア・ゼロ』『進撃の巨人』『機動戦士ガンダムUC』など、多くのドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックの制作、アーティストへの楽曲提供や編曲などを手掛ける。14年にはボーカル曲に重点を置いたSawanoHiroyuki[nZk]の活動を開始。様々なアーティストと共演し、アルバム制作やライブ活動を展開している。最新アルバム『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』が発売中。


澤野弘之オフィシャルサイト

SawanoHiroyuki[nZk] 公式サイト

Twitter 澤野弘之 [nZk]

Just ear 澤野弘之コラボレーションモデル

取材・文 柴 那典

撮影 西槇太一

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