武田薬品工業が2013年春入社の新卒採用から、応募条件に英語能力テスト「TOEIC」730点以上の基準を設けると、読売新聞などが報じた。同社広報担当は「まだまだ検討中であり、正式に決まったことではない」と答えているが、ネット上ではこの手法の可能性と是非が議論されている。英語力が昇格の条件なら「10年後には逆転現象」「転勤イヤ」どころの話ではないTOEICの公式サイトによると、730点以上は「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」レベル。とはいえ、仕事の内容によっては、通常会話はできるが、専門用語を使った交渉などは別の知識が必要という面もある。このニュースに、ネット上には「高学歴の人だったらすぐ取れる数値だね」「730点ってBランクの下だよ?」と余裕を見せる人もいるが、「応募者が激減しそうだけど」と不思議に思う問いかけもあった。これには、「履歴書の選別作業の手間を減らすのが目的じゃねーの」と、殺到するエントリー者を足切りするねらいがあるという見方が強い。TOEICの点数と人材の将来性にはあまり関係がないという見方もあるが、大手企業の中にはエントリーが2万件を超えるところもあり、選別を省力化するためには有効な方法かもしれない。もっとも、武田薬品の場合、海外24か国に関係会社を持ち、海外の研究開発拠点や生産拠点も多数ある。10年には研究開発部門のトップに外国人を置いた。「英語公用語化」ではなく、日本語と英語は普通に話せて当然という状態なのだろう。また、同社に当てはまるかどうかは分からないが、新卒の応募条件が既存の社員に与える影響についてコメントする人もいた。「新卒条件を使って、既存の社員に圧力をかけるんでしょうね」「昇進や昇給の条件に課しているはずだから、いまの新入りが10年位したら、50歳くらいのベテランよりも高給になることもある」実際、自動車関係の会社に勤務する30歳の会社員は、仕事で海外と電話会議をする際に「さっぱり聞き取れない」と嘆く。同僚が「2月をtwomonthと言ってて噴いた」という笑えない状況も起こっているようだ。「英語ができる薬」開発してもらいたいこれからのグローバル化の時代に、英語くらいできなれば生き残れない、とプレッシャーが掛かるところだが、逆に「英語なんかできなくてもいい」「英語ができるなんて口にしてはいけない」と主張する声もあった。「英語なんて身につけちゃったら就職はできても、家族つれて海外で生活しないといけないんだぞ。幸せになりたかったら、英語はしゃべれませんといったほうがいい」また、仕事で必要なスキルなら、会社が費用を出して身につけさせてくれ、という声も。「英語力なんて会社が育てるべき」「自己啓発だけで育つのを待つとか、どんなブラックだよ」しかし、現実に英語ができる人とできない人がいるのだから、育成よりも先に、できる人を優先して処遇することになるのだろう。とはいえ、オトナになってから外国語を身につけるのは、そう簡単ではない。高いハードルをクリアして入社した人に、「日本人なら誰でもTOEIC730点以上とれるようになる薬を開発してください」とお願いするしか方法はないものか。
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