メンタルヘルス不全から復職した課長 係長に降格させてもよいか

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   責任感が強く有能な管理職ほど、過重労働で体調を崩しがちという説がある。上からの重いノルマをまともに引き受け、部下の尻拭いを真面目にしていたら、おかしくなってしまうのも当然だ。

   ある会社では課長が休職している間に、部下の係長が代役を引き受けられるまでに成長した。そこで彼を新たに課長に昇格させ、復職してきた課長を降格する案が浮上したが、人事担当者にはためらいがあるという。

課長は「それは弱りますよ」と言うが

――システム開発会社の人事です。営業部のA課長が、メンタルヘルス不全で1年半休職していましたが、面談の結果、だいぶよくなっているということで復職を認めることにしました。

   とはいえ、長期休職後ということもあり、当面は残業させないなどの経過措置が必要となります。A課長が休んでいる間、社内で重要なプロジェクトが走り出していますが、そこにいきなり参加するのは難しいと考え、B係長が参加しています。

   A課長が不在の間、営業部の業務はB係長が先頭になってこなしており、実質的な課長代理という働きをしています。A課長の復職後、1か月ほど経って、営業部長が人事にやってきました。

「Aさんの様子をしばらく見てきたけど、まだまだ厳しいな。その代わり現時点では、Bくんが役割を果たしてうまく機能している。まだ少し若いが、思い切ってBくんを課長にし、Aさんを係長へ降格させた方がよいと思うがどうだろう」

   翌日、A課長を人事に呼び出して面談をし、降格について打診をしました。すると、

「いやあ、それは凄くショックですね・・・。降格なんて今まで例がないでしょう? 給料も下がるのだろうし、生活設計が狂います。うーん、それは弱りますよ」

   ハッキリ言わないものの、勘弁してくれと訴えています。とはいえ、課長を2人にするわけにはいきません。こういうとき、会社としてどういう手が取りうるのでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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