2024年 4月 24日 (水)

「技術系は不要」論者の文系社長が驚いた 思いもよらぬ理系効果とは

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

技術系トップの穴を、見事に文科系ナンバー2が埋めた形

   逆に技術系経営者サイド特有のこんな悩みもありました。

   「うちは独自技術で画期的な製品を作っているのに、どうして売れないのか」と。

   地方で農業系バイオ製品の開発販売を手掛けるN社。K社長は30年来国立大学の大学院教授を務めながら土壌改善等のバイオの研究を続け、大手企業との共同でいくつもの製品を開発してきました。退官とともに彼を慕う技術者たちと小さな会社を設立して、自社オリジナル製品の販売に乗り出したのです。

   しかし営業部隊もなく、社長の教授時代の人脈のみで製品案内するも反応はイマイチ。幸い地元の市役所を通じて農家で使ってもらうルートだけは確保できたものの、いつブレイクするかも分からない地道な口コミ効果を待っているような状態でした。

   人を介して、アドバイスをしてあげて欲しいと言われ直接お話をうかがったのですが、数人いたスタッフは、「技術者でなければ役に立たない」という社長の考えによりすべて技術者ばかり。とにかく営業センスゼロ、というより自発的営業活動ゼロ。製品内容を聞けば素晴らしいものばかりなのですが、これでは売れません。

   そこで、全国規模で販売代理店をしてくれそうな東京の会社を紹介しました。すると製品のレベルの高さは折り紙付きなので順調に売上は拡大。2年後にはその代理店の営業部長を自社のナンバー2に迎えて、その手腕で今では全国の農協や農業試験場、牧場などで採用になり、ベンチャーキャピタルからも注目され上場を打診される存在にまでなっています。まさに技術系トップの穴を、見事に文科系ナンバー2が埋めた形です。

   文科系トップは、技術系トップの理屈っぽさに辟易として遠ざけがちだったり、また逆に技術系のトップは自分との考え方の近さや、その使いやすさから同じ技術者ばかりを重用しがちだったりします。でも実は、発想や得意分野が違うエキスパートを自身の右腕として使うことで、思わぬ発展軌道に乗った会社も数多くあるのです。

   話を冒頭のソニーの話題に戻すと、現平井CEO体制下ではトップおよびナンバー2共に文科系出身者という2頭体制が続いているようです。C社やN社の話を思い出すにつけ、ソニー苦境脱出のヒントは意外にも文理混合トップ体制構築という単純なことにあるのかもしれないと、思った次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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