ある会社で営業の20代後半の新入社員がいます。彼は営業未経験で職歴も正社員経験も少なく、言い方は悪いですがまともに働いたことがありませんでした。私は、彼とは入社してしばらくしてから研修で顔を合わせることになりました。彼の印象は、少し飄々としていてしっかりやっている感がなかったので「もう年齢も20代後半だからこの辺でちゃんと働かないと先は暗いぞ。ここでしっかり働くんだ!」と気合を入れました。先入観を持たずにやってみたら、営業成績ぐんぐんアップすごい「ドヤ顔」ですね・・・また、この会社には人を育てるという習慣がなかったようなので、営業の先輩方にも「これから会社が成長していくには、彼のような若い社員を育てていかなければなりません。皆さんで彼を育てて下さい」と伝えました。上司や先輩の指導と彼の真面目な働きの結果として、彼は予算(売上目標など)を達成するようになりました。しかも1回ではなく継続して予算を達成しているのです。何で売上を上げられるようになったのか?ということを発表してもらったのですが、業界のことを深く知らないので先入観を持たないでやっていたということと、上司から言われたことをやっていたということだけでした。先輩方からするといろいろな先入観があり、頭で考えて行動しないという習慣になっていたのですが、彼は先入観を持たずにやってみたら売上が取れてしまったのです。彼が教えてくれたのは、先入観を持たずに行動することの重要性でした。慣れてしまった先輩方に逆に彼が教えてくれたことです。そんな彼も順調に営業成績を上げてきましたが、1月に私が訪問した際に、自分だけの力でできたとテングになっている節が見えました。冗談交じりではありますが「そんな課長の下で働きたくないですよ」「そろそろ主任になれますかね」と言うようになりました。だんだんこういうことを言うようになってきたというのは、自分に自信を持ってきたということでもあるので悪いことではありません。しかし、これが増長していくと悪い方向の「俺凄いんですよ!」的な俺様社員に変貌します。まだ彼は初期の段階です。とは言え、挙句の果てには営業社員全員の前で「あと2年くらいで転職したいです」と言いだしました。ある意味こういうことを言えるというのは素直で良いのかもしれません。それぞれの人生ですから転職を考えている人はいると思いますし、悪いことではありません。しかし、入社して1年くらいの人間が公然と言えるセリフではないし、言うべきではないと思います。テングの鼻をへし折ることにこれを聞いた先輩はどう思うでしょうか?「辞める気のあるヤツに教えても無駄だよな」「せっかく面倒見てやったのに何なんだ」こういう風に思うのではないでしょうか。営業の部門長に彼の日常の様子を聞き、私の考察を伝えていくと予感は的中しました。私はこのままでは彼の成長は止まり、下手すれば周囲からも良い扱いをされなくなってしまうのではないかと思ったので、彼のテングの鼻をへし折ることにしました。営業の全社員の予算達成率を見せてもらったら、彼だけがダントツでした。こうなると他の人は注意したくてもなかなかできません。自分より成績が良い人に注意するのは気が引けます。一方で言われた側も、自分より成績が悪い人に言われると「人に言う前にまずは自分のことをちゃんとやれよ!」と思い、聞く耳を持ちません。このような構造があることから、社内ではなかなか、テングになったハイパフォーマー社員には注意しにくいものです。そこで私のような外部の人間の役割が必要になります。私は、彼のやる気をそがずにどのようにして注意するか、ということを考えて挑みました。(次号へ続く=野崎大輔=)
記事に戻る