「3万円のディナーを奢ってもらうのが当然の世界」に片足突っ込んで思うこと(北条かや)
2018.09.23 10:00
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奢ってもらって嬉しいのは「タダ」だからじゃない!
ちょっと前、漫画家の西原理恵子さんが朝日新聞に寄せたメッセージが話題になった。
「娘や同世代の女の子たちには、『王子様を待たないで。社長の奥さんを目指すより社長になろう。お寿司と指輪は自分で買おう』と言いたい。男に頼り切るのは危険。しっかり仕事をして、自分で稼いでほしいです。『お寿司は男の人に奢ってもらうもの』と思い込んでいる女の人がいるけど、自腹で食べたほうがうまいでございますわよ!」
「女の子へ『寿司と指輪は自分で買おう』」(2017年3月3日付、朝日新聞より抜粋)
確かに、男に頼り切る人生はリスクが高い。所詮は他人だから、依存してもいいことはなにもない。女が自分で稼いだお金を好きなものに使う喜びは、自由と一体になって人生を豊かにする。
でも、「男の人に奢ってもらうお寿司」を、否定するのもまたツラいものだ。私が高級な食事をごちそうしてもらって嬉しいのは、「タダでご飯が食べられて嬉しい」からではない。ご飯という「食べモノ」ではなく、ごちそうするに値する時間を過ごした相手だと見なされた「コト」が嬉しいからだ。
だいたい、長く摂食障害をやっていたから、高カロリーの外食はできるだけしたくない。にもかかわらず、奢ってもらうと嬉しいのは、食事が美味しかったからというよりは、相手の「ごちそうしてあげた」という満足感に貢献する喜びを感じられるからだ。
卑近な言い方をすれば、食事を通して承認欲求を満たし合うゲームが、うまく行ったから嬉しい。浅ましいといえば浅ましいが、こういう人間の欲はなかなか制御できない。
西原理恵子さんの言いたいことは、とてもよくわかる。でも私は、「自腹で食べるお寿司」も、「男の人に奢ってもらうお寿司」も、両方選べる自由を手に入れたい。だから経済力が必要であるし、この原稿も日々そういう気持ちで書いています。(北条かや)