2019年 10月 17日 (木)

口出しはほどほどに! 円滑な事業承継には社長はポンコツがちょうどいい?(大関暁夫)

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   3年ほど前に60代半ばを迎えるにあたり、自社の部長を務める娘婿に事業承継を打診するも、「自分は経営者の器ではない」と辞退された中堅機械メーカーG社のT社長。その後、できれば会社を外部の人手に渡すことなく社内で後継を育てていきたいと、専門機関の事業承継セミナーなどに足繁く通い、いかにして社員への経営のバトンタッチを上手に運ぶべきかについて勉強に勉強を重ねてきました。

   娘婿を含めた周囲が認める社長後継最有力候補のH取締役に代表権のある副社長就任を打診。(2018年)4月からは「社長=副社長」の、いわゆる2頭体制をスタートしました。

   これまでの基本的な社長業務はH副社長に権限委譲して1年かけてバトンタッチを進め、T社長が70歳の大台に届く前の来春にはそれを完了させる。自身は代表権のない会長職に退き、完全リタイアに向けた準備をするとの展望を、新体制スタートの折には話していました。

  • 口出ししないで!
    口出ししないで!

「事業承継というヤツは本当に難しい」

   新体制スタートから半年が経ち、その後の事業承継の進捗がどのような様子か聞きたく社長にアポイントを入れました。するとT社長は電話口で、「相談したいことが山ほどあるので、すぐにでも来てほしい」と何やらお困りの様子が。そして数日後、お目にかかるやいな社長の口をついて出た言葉は、「相手のある事業承継というヤツは、本当に難しい」でした。

「H副社長は技術者として大変優秀であるし、リーダーシップもあり、彼以上の後継候補は見当たらないことに変わりありません。しかし、この半年2頭体制でやってきて、技術と開発面は順調な権限委譲ができているが、肝心のマネジメント面がうまくない。彼は人一倍リーダーシップがあると見ていたのですが、実際に最終決定権者のポジションに立たせるとどうもフラフラして、自分でモノが決められないのです。
これでは社内がHくんを中心に回っていきません。それどころか、このままだと来春はおろか死ぬまで私が社長でいなくてはいけなくなりそうで、そんなことでは会社は私と共に滅びてしまいます」

   この話を聞いて、たまたま少し前に読んだ海外からのレポート記事を思い出しました。それは、米ハーバードケネディスクールでリーダーシップ論を長年担当しているロナルド・ハイフェッツ氏が、著書「最難関のリーダーシップ ~変革をやり遂げる意志とスキル」の中で、変革につながる権限委譲を妨げる2要因として、「技術的問題 Technical Problems」と「適応課題 Adaptive Challenges」を挙げて説明しているものでした。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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