2024年 4月 19日 (金)

働き方改革では残業は絶対なくならない! 職場に「感染」「遺伝」するメカニズムがコレだ

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メカニズム3:残業はしすぎると「麻痺」して快感に

残業をし過ぎると「麻痺」して快感になる
残業をし過ぎると「麻痺」して快感になる

   3番目は、残業は「麻痺」させるだが、じつはこれがもっとも意外性のある発見だったという。まず、図表3を見てほしい。残業時間(月間)の割合に応じて、個人の「幸福感」と「会社満足度」を尋ねてグラフ化したものだ。残業時間が増えるにつれて「幸福感」と「満足度」が下がっていくのがわかる。残業は普通、苦痛だから当然だが、不思議なことに60時間以上、つまり相当な過剰労働をしている層で、逆に「幸福感」と「満足度」に上昇カーブが見られたのだ。

   60時間を超えると、苦痛が「麻痺」して快感に変わったように見えるのはなぜか。ちなみに、ここでいう「幸福感」は社会心理学でよく使われる、エド・ディーナー米イリノイ大学教授の「幸福感の尺度」を使用している。「私の人生はとても素晴らしい」など5項目の質問に7段階で答えると、「幸福度」がわかるというテストだ。

   それにしても、月に60時間を越える超・長時間労働をしているグループの中で、「幸福感」だけではなく、「会社満足度」と「ワークエンゲージメント」(仕事への熱意)まで上昇の動きが見られるのはなぜか。長時間残業が健康リスクを顕著に高めることは、脳科学を中心にいくつかの研究で明らかになっている。残業なしの層と比べると、食欲減退・重篤な病気・ストレスを抱えるリスクが1.6倍~2.3倍になるという調査もあるというのに......。

   この不可解な現象は、「仕事中毒」(ワーカーホリック)といった精神病理なのか、それとも駅伝チームが猛練習に耐えるように、仕事好きが一つの目的に邁進する連帯感からきているのか。つまり、マイナスととらえるのか、プラスととらえるか、小林さんに聞くとこう語った。

「精神病理とまでは言えません。また、単純に言えば幸福度が高いことは悪いことではありません。ただ、月に60~80時間の長時間労働を行っているのにも関わらず幸福度が高いということは、自発的に長時間労働を行いながら心身の健康リスクを溜め込んでしまいます。データからは、この幸福感の背景には、会社で現職以上に昇進するチャンスがあると思っている、組織が一致団結して目標に向かう雰囲気があるといった要因があることがわかっています。

こうした見込み、期待は必ず報われるものではありません。昇進が裏切られたり、目標が達成できなかったりしたときに、一気に心身のバランスを崩してしまう恐れがあります。企業側が『本人にやる気があるならいいじゃないか』といった態度で放置するのは、本人にも社会責任の面でも避けるべきです」
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